ノコンギクとヨメナの花はどちらも淡紫色をしていて,よく似ています。

いがりまさし著『日本の野菊』(2007年)によると,淡紫色をした野菊には基本となるものが3種あり,それらの違いは次のようになります。

  ノコンギク ヨメナ

ヤマジノギク

卵形~長披針形。ざらつく 卵形~長披針形。つるつるする へら形~線形。ざらつく
総苞片 卵形 卵形 線形
冠毛 長冠毛(筒状花,舌状花とも長い) 短冠毛(筒状花,舌状花とも短い) 異冠毛(筒状花のものは長く,舌状花では短い)
生活型 多年草 多年草 基本的に2年草
分布 北海道~九州 本州,四国,九州 本州(静岡県以西),四国,九州
生育環境 耕地周辺から山地の林縁まで幅広い環境に生育する 耕地周辺に多く,山地で見かけることはまずない。適湿な環境を好む

山地の日当たりのよい草原や岩場。田んぼのあぜなどで見かけることはまずない。乾燥した環境を好む

同定のポイント この3種のなかで,もっとも広いエリアでふつうに見られる基本的な野菊。長冠毛であることを確かめればもっとも確実な同定法 ノコンギクも同じような環境に生えていることが多く,遠目にはよく似ているが,葉を触って冠毛を確かめれば確実に同定できる 線形の総苞片と異冠毛を確かめれば,ノコンギクやヨメナと間違えることはない。頭花はノコンギクやヨメナよりひとまわり大きい
主な仲間 シオン,シロヨメナ,センボンギク オオユウガギク,コヨメナ,カントウヨメナ,ユウガギク ハマベノギク,ヤナギノギク,ブゼンノギク

ヤマジノギクはこの辺りでは見ないので,紛らわしいのはノコンギクとヨメナです。

それぞれ個体差が大きいので,色や形,大きさはあてになりません。
判別のポイントは,葉の手触りと,冠毛の長さにあるようです。

ノコンギクの葉はざらざらしているのに対し,ヨメナの葉はつるつるしています。
ヨメナは嫁菜とも書き,若葉を食用にするくらいなので,葉は優しい肌ざわりです。

冠毛の長さは,頭花をほぐして,ひとつひとつの花を見るとわかります。
ノコンギクは管状花,舌状花どちらにも,ふさふさの毛がついているのに対し,ヨメナには毛がありません。(正確には,ヨメナには冠毛がない訳ではなく,短いだけのようです)[写真6][写真7]
これも「野」と「嫁」を対比させると,「嫁」は毛深くないということでしょうか。

  • [写真1]ノコンギク頭花
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  • [写真2]ヨメナ頭花
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  • [写真3]総苞片
    左:ノコンギク 右:ヨメナ  »»拡大
  • [写真4]葉
    左:ノコンギク 右:ヨメナ  »»拡大
  • [写真5]頭花断面
    上:ノコンギク 下:ヨメナ  »»拡大
  • [写真6]冠毛(左:筒状花,右:舌状花)
    上:ノコンギク 下:ヨメナ  »»拡大
  • [写真7]冠毛(左:舌状花,右:筒状花)
    上:ノコンギク 下:ヨメナ  »»拡大