オニユリの花。
一般的に植物や虫の名前で「鬼」とつくのは大きな方をさし,「姫」とつくのは小さな方をさします。
鬼ユリは姫ユリに対するもので,オニユリは花径8~12cm,ヒメユリは花径4~6cm。
下向きに咲いた姿から連想して,天蓋ユリの別名もあります。
オニユリに限らず,ユリの花の花粉は手や服につくと厄介なものです。
花を生けるときには,前もって葯を取り除きます。
花屋さんで売られているものも葯が取り除かれています。
他の花の花粉に比べて,どうしてユリの花粉が服などにくっつきやすいかについて,田中肇著『花の顔』(2000年)には,次のように書いてありました。
花粉がつきやすいのは,花粉の媒介をチョウに頼んでいるからだ。チョウの体を覆っている鱗粉は,水滴をはじき,ゴミなどを寄せつけない優れたコートである。そこに花粉をつけなくてはならないから・チョウを待つ花の花粉はひどくねばねばしている。
さらに雄しべは長く突きでていて,先端の葯はT字形についている。この葯はどんな角度で触れてもすばやく首を振って掃除機の吸い込み口のようにぴたりと接し,チョウの羽を花粉まみれにする。
[写真3]は,葯と柱頭です。
色々な仕掛けをもちいて花粉をチョウにくっつけ,他の花へ運んでもらったとしても,オニユリが果実をみのらせることは稀です。
染色体数が3倍体のため種子をつけることができないためです。
かわりに葉脇には珠芽(しゅが)ができ,地上に落ちて発芽します。[写真4]
花びらの根元には蜜を出す溝があります。[写真5]
[写真6]は花びらを縦に切った断面です。
根元には蜜がたまっていて,舐めると甘い味がします。