さすがに今の時期になると,ヌスビトハギの果実もまばらに残っているだけです。
メガネのように中央でくびれた果実は二つに切れて,片方だけになっています。
服についていた果実の果皮をむいて,中の種子をとりだしてみました。
マメ科なので豆の形をしているのだと思っていましたが,以外にも平べったい勾玉のような形をしています。
種皮が薄く,黄色い子葉が透けて見えます。
何かおいしそうです。
隣に生えていたアレチヌスビトハギ(外来種)の種子と比べてみました。
[写真1]の左側がヌスビトハギの種子,右側がアレチヌスビトハギの種子。
アレチヌスビトハギの方は豆らしい形をしています。
よく似た両者ですが,種子はこんなに形が違うのですね。
[写真2]は,鞘のなかの様子。
ヌスビトハギの種子が鞘と同じ形をして鞘いっぱいにきっちり納まっているのに対して,アレチヌスビトハギの種子は鞘に比べて随分小さめです。
[写真3]は種子を横から見たところ。
どちらも平べったい形をしています。
ヌスビトハギもアレチヌスビトハギも種子散布には,果実を動物に付着させて遠くまで運んでもらうという方法(付着散布)をとっています。
果実の表面にJ字形の突起が密生していて,この突起で動物の毛に付着するのです。[写真5]
果実が平べったいのは,表面積を増やしてより付着しやすくするための戦略です。
そういう意味ではアレチヌスビトハギの方が,種子よりも大きな鞘で覆われいる分,表面積を増加させることにより積極的だといえます。
さらにアレチヌスビトハギは種子を小さくすることにより,自重を軽くし付着力をアップさせています。
果実表面の付着力もアレチヌスビトハギの方が強力です。
アレチヌスビトハギの果実は,人の皮膚などにも容易にくっつきます。[写真4]
(ヌスビトハギも押しつければくっつきますが,すぐにとれてしまいました。)
アレチヌスビトハギは北米原産の外来植物で,1940年に大阪で初めて確認され以来,急速に分布域を広げています。
このあたりで見るのもアレチヌスビトハギばかりで,ヌスビトハギは限られた場所にしか生えていません。
アレチヌスビトハギの勢力拡大の一因には,こうした付着力の強さがあるのかもしれません。
ヌスビトハギについて→2010年9月30日
アレチヌスビトハギについて→2010年10月4日