半透明のテントウムシといった感じの変わった虫がいました。[写真1][写真2]
イチモンジカメノコハムシです。

ハムシは「葉虫」で,植物の葉を食べる小さな昆虫です。
ハムシのなかまはどれも小さくて,とりたてて特徴のない地味なものが多いのですが,カメノコハムシのなかまだけは特異な姿をしています。

カメノコは「亀子」で,姿としては亀の甲羅のような形をしています。
図鑑などでは,陣笠状とあります。
「陣笠状」という表現が一般的かどうかは別として,確かに外縁部が陣笠のつばのように外側にはりだしています。

イチモンジは「一文字」で,翅鞘にある茶褐色の模様が一文字になっているからだと思います。

カメノコハムシのなかまを特徴づけているのは,形だけでなく,体が半透明なことです。
まるで透明なプラスチックで,できているようです。
何かに擬態しているのでしょうか。
一見,鳥の糞に見えないことはないのですが。

幼虫も自らの脱皮がらを背負うという,擬態なのかどうか分からない,奇妙な行動をとります。
[写真6]は,たまたま7年前に撮っていた写真です。
その時は何なのか分らなかったのですが,イチモンジカメノコハムシの幼虫のようです。

北隆館『日本昆虫図鑑』(昭和31年・1956年)には,イチモンジカメノコハムシについて,次のように書いてありました。

体長8~9mm。本邦産のカメノコハムシ亜科の最大種。外形はほぼ球形であるがやや長味を帯び,背面は陣笠状に膨隆し,腹面は扁たい。前背板と翅鞘の板面は概ね茶褐色,腹面では頭・触角基部の5,6節・脚・腹部腹板の側部の淡褐色なのを除いて黒色。翅鞘には強大な点刻列が10本あり,間室は隆起し,所々に横隆条があり,これらの隆条は黄褐色。前背板と翅鞘の扁平縁は網状を呈し,翅鞘の後側方の扁平縁の上には茶褐色の帯が出ている。本州・四国・九州・中国に分布し,1年1回の発生で,成虫は5,6月ごろ多く,幼虫も成虫もムラサキシキブやヤブムラサキの葉を食う。

「本邦産のカメノコハムシ亜科の最大種」とあります。
日本で一番大きい種類といっても,体長1cm弱で,小さな昆虫です。
せめてコガネムシくらいの大きさがあれば,もっとポピュラーな虫になったのでないかと思います。

[写真5]は,スキャナーの蓋をのせたら,クシャっとつぶれたところ。
甲虫の割には,やわな体をしていますね。
「強大な点刻列が10本あり,間室は隆起し,所々に横隆条が」ある翅鞘は,職人技で細かな細工を施したように見えます。

「幼虫も成虫もムラサキシキブやヤブムラサキの葉を食う」。
[写真6]の幼虫が食べている葉は,よく見るとヤブムラサキのようです。