コオニヤンマの羽化したばかり個体(♀)を使って,トンボ成虫の各部の名称とコオニヤンマの特徴を調べてみました。

北海道大学図書刊行会『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑 』(1999年)には,コオニヤンマについて次のように書いてありました。

腹長♂53~66mm,♀52~62mm。後翅長♂46~54mm,♀48~56mm。
 日本産サナエトンボ科中最大の種類で,世界でも屈指の大きさにランクされる。体のわりに頭が小さく,複眼が左右にやや広く離れてつく。側単眼の斜め後ろに1対の角状突起があり,また後頭の後緑が平たくもりあがって1対の三角形状の突起となるのが特徴。
 体色は黒色の地に黄色い条斑がある。 ♂ ♀で差がなく,成熟してもあまりかわらない。頭部は顔面が黒く,前額と大顎の基部前面が黄色。複眼は未熟なうちは黄褐色をしているが,成熟すると緑色に輝く。胸部は翅胸前面が黒色。背隆線の下方に襟条に連ならない細い黄色条がある。背隆線の両側に1対の黄色条がある。この黄色条は一般に襟条と連なってL字形を呈するが,襟条と離れている個体もある。前肩条とその上部の小黄色点はともにないが,下端に小黄色点のあるものがある。胸側は黄色。第1側縫線の黒色条は上部が細いが,第2側縫線の黒色条は太く,しばしば下部が癒合している。はほぼ無色透明。翅脈・縁紋はともに黒い。は黒色で長く,特に後肢の腿節が太くて著しく長い。腹部は黒く,第1 ・ 2節の背面正中線上に黄色条がある。第3~8節の前縁に背面中央でわずかに切れた幅の広い黄色環状斑がある。第7~9節はあまり広がらない。 ♂の尾部上付属器は太短く,内側へ鉤形に曲がって先端が鋭く尖る。 ♀の産卵弁は小さく,先端がごくわずかへこんだ台形をしている。尾毛は短く,鈍頭の棘状。

・腹長♂53~66mm,♀52~62mm。後翅長♂46~54mm,♀48~56mm。
[写真1],[写真2]は,全身をスキャナーで撮影したものです。
[写真2]で計測して見ると,腹長 58mm,後翅長 54mm。
♀としては標準的な大きさのようです。

・体のわりに頭が小さく
横側からの写真[写真2]を見ると,トンボとしてはアンバランスなほど頭が小さいですね。

・複眼が左右にやや広く離れてつく
左右の複眼が接することなく,離れてつくのが,サナエトンボ科の特徴です。[写真4]

・側単眼の斜め後ろに1対の角状突起があり,また後頭の後緑が平たくもりあがって1対の三角形状の突起となるのが特徴。
[写真4]にある二組の突起が,コオニヤンマの特徴です。
 (引用文中の「側単眼」は誤植? 3個ある単眼の内,端側のものを側単眼というのかなと思ったのですが,調べてみると「側単眼」は幼虫時代に複眼の代わりになる単眼で,成虫にある「背単眼」とは区別されるもののようです。)

・体色は黒色の地に黄色い条斑がある。 ♂ ♀で差がなく,成熟してもあまりかわらない。
この個体は羽化したばかりの♀ですが,体色は成熟した♂(→2008/8/21)と比較してもほとんど変化はありません。

・頭部は顔面が黒く,前額と大顎の基部前面が黄色。
前額(ぜんがく)の黄色は非常に人目を引く一方,大顎基部の黄斑は目立たない特徴ですが,サナエトンボのなかまでは同定の手がかりになるようです。[写真4]

・複眼は未熟なうちは黄褐色をしているが,成熟すると緑色に輝く
成熟した個体

・胸部は翅胸前面が黒色。背隆線の下方に襟条に連ならない細い黄色条がある。背隆線の両側に1対の黄色条がある。この黄色条は一般に襟条と連なってL字形を呈するが,襟条と離れている個体もある。
トンボの各部名称は複雑で,背隆線(はいりゅうせん)がどこを指すのかだいぶ迷いました。
背隆線の両側にある1対の黄色条は「一般に襟条と連なってL字形を呈するが,襟条と離れている個体もある」。
羽化した3頭の個体は,いずれも「襟条と離れている個体」でした。[写真5]

・前肩条とその上部の小黄色点はともにないが,下端に小黄色点のあるものがある。
3頭の個体はいずれも,前肩条(ぜんけんじょう)の下端に「小黄色点」がありました。[写真5]

・胸側は黄色。第1側縫線の黒色条は上部が細いが,第2側縫線の黒色条は太く,しばしば下部が癒合している。
3頭の個体はいずれも,第1側縫線と第2側縫線の黒色条が「下部が癒合している」個体でした。[写真6]

・翅はほぼ無色透明。翅脈・縁紋はともに黒い。
[写真1]

・肢は黒色で長く,特に後肢の腿節が太くて著しく長い。
[写真7]

・腹部は黒く,第1 ・ 2節の背面正中線上に黄色条がある。第3~8節の前縁に背面中央でわずかに切れた幅の広い黄色環状斑がある。第7~9節はあまり広がらない。
[写真3]

・♀の産卵弁は小さく,先端がごくわずかへこんだ台形をしている。尾毛は短く,鈍頭の棘状。
[写真8]