動物園南の疏水,2羽のスズメが羽ばたきながら,石垣にのびたツタのあたりを,さかんにつついていました。
近付くとスズメはすぐに逃げ,その後に何かがポトリと落ちました。
奇妙な形をしたものがあるのはわかるのですが,石垣の色に紛れて何なのか判然としません。
顔を近付けてよく見ると,ヤゴから半分だけトンボの体がでているではないですか。

羽化途中を襲われたようです。
手にとるとまだ生きています。[写真1]
私の手の指を必死に登ろうとしています。
致命的な傷は負っていないようですが,正常に羽化するのは難しそうです。
とりあえず手で触らないように,落ちていた小枝にとまらせました。
必死に枝をつかんでいるものの,その力は弱々しく今にも落ちそうです。

枝にとまらせたまま,急いで帰路につきました。
その間にも羽化はどんどんと進行してゆきます。
ヤゴから体が抜け出せないまま羽化は失敗するだろうと思っていましたが,意外にも,途中で無事,体全体がヤゴから抜けだしました。[写真3]

その後は枝にじっととまって大きな変化はありません。
しかし,あらためて[写真4]~[写真6]を見て気づいたのですが,時間の経過とともに腹部が伸びています。
[写真4]では腹部は翅よりずっと短いのに,[写真8]では翅より長くなっています。

8:00頃になると,時々,腹端から透明なしずくを垂らすようになりました。[写真7]
多分,翅を伸ばすために使用した体液を排出しているのだと思います。
チョウの羽化のさいにもみられる現象です。

9:00頃に翅を開きました。
チョウが羽化する際には,翅を乾かすように開けたり閉めたりを繰り返しますが,トンボは一度翅を開いたらそのままにしているようです。
9:47頃,翅を細かく振るわせ始めました。
アイドリングであったかのように,2~3分翅を振るわせた後,ふわりと飛び立ちました。

羽化したのは,コオニヤンマでした。
過去の記事を見てみると,2007年6月2日にも,同じ場所でコオニヤンマの羽化する前のヤゴを見つけています。→2007年6月2日