天井のあたりでカサカサと音がすると思ったら,トンボが入り込んでいました。
黄色と黒の縞模様,少し太くて,ずん胴気味の腹部,翅の根もとに黒褐色斑があるトンボは,オオシオカラトンボのメスです。
以前にも家のなかに入ってきたトンボのことを書いていますが,その時もオオシオカラトンボのメスでした。(→2009年8月20日

ミナミヤンマ・クラブ『近畿のトンボ図鑑 』(2009年)には,オオシオカラトンボの生息環境について次のように書いてありました。

平地から山地の湿地,水田,休耕田や溝川,沢筋など。シオカラトンボと比べると,周囲が樹林に囲まれた閉鎖的な環境を好む。

近畿地方では全域に広く分布する。平地では少ないが,林の残っている場所で見られることがある。

明るくて広々とした環境を好むシオカラトンボに対して,オオシオカラトンボは樹林に囲まれた閉鎖的な環境を好むようです。
トンボたちには我が家の周辺の環境は,そう見えているのでしょうか。

東海大学出版会『日本産トンボ幼虫・成虫検索図説』(1988年)で,検索図をたどってみました。(誤って踏みつけてしまい,写真の個体はすこし傷んでいます)

①前翅と後翅の形が違う[写真1]
→不均翅亜目

②裸眼が広く接する[写真4]
 前翅と後翅の三角室(さんかくしつ)の向きがちがう[写真3]
 裸眼の後側縁はなめらか。[写真6]
→トンボ科

③体長34mm以上[写真5]
 腹部は黒色でないか,または黒色でも乳白色部がない[写真5]
 後翅の肛角部(こうかくぶ)が内方へ広がる[写真3]
 後翅に淡橙褐色斑がない[写真3]
 翅に黒褐色斑がない[写真3]
 →この部分が腑に落ちないところです。翅の基部に黒褐色斑があるのがオオシオカラトンボの特徴の一つですが,この検索表では「翅に黒褐色斑がない」としないと,オオシオカラトンボにたどりつけません。「翅に黒褐色斑がある」とすると,ヨツボシトンボ属になります。
 体は淡褐色でない[写真5]
 複眼の幅と前額の幅の比が,およそ1:1.8[写真4]
 前額は白色でない[写真4]
 縁紋の外側の脈が白色でない[写真3]
 前額は藍色でない[写真4]
 翅胸側面の黒色条の先が後方に流れない[写真5]
 腹部第2,3節に斜め横のひだがあるが,第4節にはない[写真5]
 →この部分もよくわかりません。[写真5]の第4節にある線(三角印の部分)は,「斜め横のひだ」にあたらないないのかどうか。
 前胸後縁に長毛が密生する[写真6]
 体は黄褐色と黒色の縞状[写真5]
 ♀の腹部第8節下縁が広がる[写真5]
 前翅結節前横脈は11~19本[写真3]
→シオカラトンボ属

④腹部第1~3節があまりふくれず,第4節から急に細くならない[写真5]
 体は黄褐色の地色に黒色~黒褐色の斑紋がある[写真5]
 翅は基部に有色部がある[写真3]
 翅の基部は黒色~黒褐色[写真3]
 翅胸に太い黒色条がある[写真3]
→オオシオカラトンボ