庭にフキノトウが出ていました。[写真1]
苞に包まれた,食べごろのつぼみです。
この場所は日があまり当らないせいか,柔らかくてエグミの少ないフキノトウが出ます。
日のあたる場所に出るものは緑色が濃くて生き生きとしているのですが,エグミが強くて食べるのには適しないようです。
半分に切ると,中には細長い粒々の蕾が詰まっています。[写真3]
粒の一つひとつが花で,集まって頭状花序を形成します。
[写真4]は苞を剥いだところ。
フキは雌雄異株で,雄花が咲く株と,雌花が咲く株があります。
以前に調べたときには,この場所に生えているフキは雄株ばかり。
それも花粉を出さない三倍体の雄花でした。(→2011/3/23)
『牧野富太郎植物記』(1974年)には,フキノトウについて次のように書いてありました。
フキは日本特産の植物で山や野にふつうに見られます。早春,つぽみの集まったものが厚いみどり色のうろこ状のほう(包・葉の変わったもの)に包まれて,まるまるとして地上にあたまを出します。これを「フキのとう」とよんでいます。
このフキのとうは,つぽみの集まったものですが,しだいにのびて4,50センチにもなり枝分かれし,その先に小さな白っぽい花の集まりをつけます。一つ一つの小さな花はつつ形の花です。このつつ形の花には二通りあって,一つは両性花でまん中にめしべがあって,まわりにおしべがありますが,めしべが不完全で実をむすびません。も一つの花はめしべだけの花です。フキでは,両性花をつける株と,めしべだけのめぱなをつける株とが別々になっています。こういう植物を雌雄異株といいます。つまり,雌の株と,雄の株が別々になっている植物です。フキでは雌の株のめしべのあたまに,両性花のおしべ(めしべは不完全)の花粉がつくと実をむすびます。ですから実ができるのは雌の株だけです。
実はタンポポの実に似ていて,白い長い毛(冠毛)がたくさんはえています。
フキは地上に茎を出さず,地中に短い茎があり,周囲の地中に根茎とよばれる枝を出してはびこります。フキのとう,つまり花は,この根茎から出ます。花が出たあと,葉が出ますが,葉には長い柄がついていて,その先に大きなじんぞう形の葉がひろがります。この葉についている長い柄はやわらかいので食用になります
フキを漢字で「蕗」と書くことがありますが,フキは日本特産種なので,もともと中国での漢字の名は存在しません。
この字は日本でつくられた漢字(国字)だそうです。