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[写真1]
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[写真2]
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[写真3]
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[写真4]
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[写真5]
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[写真6]
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[写真7]前肢ふ節
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[写真8]
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[写真9]前胸背板側緑の剛毛
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[写真10]2014/6/20
家の前の道をオサムシが歩いていました。
オサムシは身近にいる虫なのですが,夜行性なのであまり見かけることはありません。
この自然観察日記でも,オサムシについて書いているのは,昨年のスジアオゴミムシだけです。(→2013年9月4日)
オサムシは漢字では「歩行虫」と書くように,地上を歩き回ってミミズやカタツムリなどを捕食しています。
雑木林の生態系のなかで地表面の捕食者として生きる道を選んだのか,飛ぶことをやめてしまいました。
オサムシのほとんどの種類は,飛ぶために必要な後翅が退化してしまっています。[写真6]
飛べないために行動範囲が限られ,地理的分化が進んでいます。
日本にいるオサムシは約40種,亜種は100以上になります。
それぞれの種の形態はよく似ていて,これほどたくさんの種に分ける必要があるのかなとも思いますが,交尾器の形状が異なるため他種との交雑は起こらず,遺伝子DNAも異なるそうです。
図鑑を見ても,どのオサムシなのか同定するのはなかなか困難です。
色々と迷った挙句,地域分化が進んでいるなら,その地域に棲んでいるオサムシに絞り込んで調べる方が早いということに気がつきました。
京都府自然環境目録(鞘翅(コウチュウ)目)によると,京都府に生息するオサムシ亜科に属する昆虫は次の13種です。
・ホソアオクロナガオサムシApotomopterusporrecticolliskansaiensis
・クロカタビロオサムシCalosomamaximowiczi、京都府絶滅寸前種
北区深泥池と宇治市天ケ瀬のみ
・エゾカタビロオサムシCampalitachinense
・オオオサムシCarabusdehaanii
・イワワキオサムシCarabusiwawakianusiwawakianus府南部に局所分布
・アキオサムシCarabusjaponicuschugokuensis、京都府絶滅寸前種
夜久野町と芦生演習林のみ 分布の東限
・マヤサンオサムシCarabusmaiyasanusmaiyasanus
・ヤコンオサムシCarabusyaconinus
・ヤマトオサムシCarabusyamato府南部に局所分布
・マイマイカブリDamasterblaptoidesblaptoides
・セアカオサムシHemicarabustuberculosus、京都府絶滅危惧種
淀川水系と府北部に稀産
・オオクロナガオサムシLeptocarabuskumagaii府北部には分布しない
・クロナガオサムシLeptocarabusprocerulus
この中ではマヤサンオサムシが一番該当しそうです。
北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 2』(2007年)にはマヤサンオサムシについて,次のように書いてありました。
体長21~29mm。体の背面は黒色もしくは銅色。まれに緑色となる個体もある。前頭~頚部は皺が多く,強い点刻が認められる。通常♂の触角でも上翅中央部に届かず,♂♀とも触角は短い。前胸背板の幅は広く,後角はあまり突出しない。通常2本の側緑剛毛がある。上翅間室は普通滑らか。第1次間室はやや凹み,条溝の刻み目は明らか。 ♂では触角の第5~7節下面で無毛部が認められる。前脛節の内縁は角張る(北陸地方産は除く)。交尾片は長く鉤状,先端部の下面が広がり垂直部を形づくる。また下面の少なくとも一部は膜質であまり角化せず,淡色,乾燥下で変形することもある。分布:本州(新潟県南部までの北陸地方・中部地方西部・東海・近畿地方・鳥取県までの中国地方東部)。
・体長21~29mm
体長は25mm。[写真1]
・体の背面は黒色もしくは銅色
体の背面は銅色です。[写真3]
・前頭~頚部は皺が多く,強い点刻が認められる
[写真2]
・通常♂の触角でも上翅中央部に届かず,♂♀とも触角は短い。
この個体は,前肢ふ節が肥大してないので♀です。[写真7]
[写真6]では触角が切れて7節までしかありませんが,[写真10]は11節ある完全な状態のもの。
これでも上翅中央部には届きません。
・前胸背板の幅は広く,後角はあまり突出しない
[写真6]
・通常2本の側緑剛毛がある]
側緑剛毛なんてどこにあるのだろうと探したところ,1本だけ小さな毛が生えているの見つけました。[写真9]
他の毛は抜けてしまったのかどうかはわかりません。
・上翅間室は普通滑らか。第1次間室はやや凹み,条溝の刻み目は明らか
甲虫上翅の間室とは,翅に刻まれた何本もの溝の,溝と溝の間の隆起している部分を言います。
真ん中から外に向かって,第1間室,第2間室……と名付けられています。
しかし,ここで出てくる「第1次間室」とは「第1間室」とは別もののようです。
第1次間室,第2次間室とはどの部分をさすのか,どうもわかりません。
八坂書房『オサムシ―飛ぶことを忘れた虫の魅惑―』(2008年)に次の図が載っていました。
この本にも各部名称の説明は載っていませんが,図によると第1次間室とはある1本の間室を指すのではなく,同じような形状をした何本かの間室を指すようです。
しかし何をもって第1次,第2次,第3次と分けられているのか,よくわかりません。
・前脛節の内縁は角張る
こういう何気ない表現も,素人には分かりづらいところです。
「前脛節」は「前肢の脛節」と理解できるものの,「内縁」とはどの部分を指すのかはっきりしません。
・交尾片は長く鉤状,先端部の下面が広がり垂直部を形づくる
オサムシは外観が似ている種類であっても交尾片の形状が大きく異なるため,種を判定するのには交尾片の形状が決め手になるそうです。
交尾片は♂にしかなく,♀であるこの個体にはありません。
と,この個体はマヤサンオサムシではないかと思うのですが,確信が持てないままです。