すこし小ぶりですが,しっかりした形のイグチが出ていました。[写真1]
茎の下部がふくらみ,傘は暗褐色でビロード状です。
ススケヤマドリタケかなと(→2007/6/30)思い写真だけを撮りましたが,後で見るとススケヤマドリタケとは異なります。
現物を確かめようと翌日見ると,なくなっていました。
誰かが採取したようです。

数日後,同じ場所にまた発生していました。[写真2]
今度は採取して名前を調べてみました。
発生していた場所は,マツとコナラの混成林。
傘の径は約4cm。
柄の長さは約6cm,径1~1.5cm。
傘,柄とも切断するとすぐに青変します。[写真5]

図鑑(『山渓カラー名鑑 日本のキノコ』)をめくって,写真と照らし合わせたところ,アメリカウラベニイロガワリがよく似ています。
保育社『原色日本新菌類図鑑(Ⅱ)』(1989年)には,アメリカウラベニイロガワリについて,次のように書いてありました。

アメリカウラベニイロガワリ(新称,本郷)Boletus subvelutipes Peck
 傘は径5~13.5cm,まんじゅう形。表面は初め微毛を密生し,ビロード状のち無毛平滑。湿ると多少粘性をおびる。色は変化にとみ,褐色,帯赤褐色,帯黄褐色,または暗褐色で,強くこすると暗青色に変わる。肉は黄色,空気に触れるとすぐに濃い青色に変わる。管孔は上生~離生し,黄色のち帯縁黄色。孔口は血紅~帯褐赤色(傘縁では淡色),小形。管孔および孔口は傷つくと暗青色に変わる。柄は5~14x1~2cm,上方に向かってやや細まるかほぼ同幅,基部は黄色の菌糸におおわれる。表面は黄色の地に暗赤~帯褐赤色の細点を密布し,ときに頂部に細かい網目模様を表す。傷つくと暗青色に変わり,その部分はのちに黒ずむ。胞子紋はオリーブ色。胞子は11~12.5x4~5μm,類紡錘形,縁シスチジアは25~45x5~12.5μm。夏~秋,ブナ林,ミズナラ林,コナラ・クリ林,シイ・カシ林などの広葉樹林内地上に群生する。分布:日本(本州~九州)・北アメリカ(東部)。
 ウラベニイロガワリ B.erythropus(Fr.:Fr.)Krombh.に似てしばしば混同されるが,柄は細長く,基部に黄褐色~褐色の粗い菌糸を欠く。

書かれている特徴はよく似ています。
念のために,同書でヤマドリタケ属の検索表をたどってみました。

傘は黄褐色,赤褐色,または暗褐色などの褐色系の色彩をおびる。肉は強く青変する。

まで進み,次

柄は下方で明らかに太まり,基部にさび褐色~オリーブ褐色の毛被をもつ…………オオウラベニイロガワリ B.erythropus(Fr.:Fr.)Krombh.
柄はほぼ同幅,基部の毛被は帯黄色,濃紅色,またはやや帯オリーブ色……………アメリカウラベニイロガワリ B.subvetipes Peck

柄の上下がほぼ同じ太さなら「アメリカウラベニイロガワリ」,明らかに下部が太くなっているなら「オオウラベニイロガワリ」ということになります。
この「オオウラベニイロガワリ」は,アメリカウラベニイロガワリの解説文の最後に「しばしば混同される」としている「ウラベニイロガワリ」と同じものを指すようです。
学名が同じです。

[写真1]を見ると,柄は明らかに基部が太くなっていますね。
このキノコは,「アメリカウラベニイロガワリ」ではなく「オオウラベニイロガワリ」のようです。
よく似たキノコも多いので,断定はできないのですが。