よちよち歩き回っているスズメバチがいました。[写真1]
左前脚の付節が折れて,変な形に曲がっています。
翅は震わせるものの,飛べないようです。

すこしびびりながら採集しました。
図鑑で調べると,コガタスズメバチのようです。
北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)にはコガタスズメバチについて,次のように書いてありました。

体長♀(女王) 26~29mm, (働きバチ)22~27mm, ♂23~26m。黒色。頭部は黄色で頭頂部に明瞭な黒斑を欠く。前胸背板には通常細い黄色の横帯があり,まれに肩部も赤褐色。小楯板の後紋は赤褐色。各腹背板後縁の黄帯は幅広く波状をなさず,尾端節は全く黄色。第1腹背板水直部は通常大部分赤褐色。第2腹背板基部両側に1対の黄ないし褐色の大斑を持つ個体は♀および♂に多い。前肢は大部分黄色。中・後肢は黄褐色ないし黒色。頭はやや大きく,頭楯前縁の2大歯間には1小歯あるいは1小隆起がある。翅は黄~黄褐色をおびる。

・体長♀(女王)26~29mm,(働きバチ)22~27mm,♂23~26m
この個体の体長は約28mmです。[写真2]
大きさからすると女王バチっぽいのですが,時期的に新しく生まれた女王バチなのか,働きバチなのかよくわかりません。

・頭部は黄色で頭頂部に明瞭な黒斑を欠く
頭頂部の単眼周辺は黒くならず,黄色です。[写真7]
キイロスズメバチやモンスズメバチは,単眼周辺が黒くなっています。

・前胸背板には通常細い黄色の横帯があり
前胸背板とは胸部の一番前面の部分で,見えにくいですが黄色い帯模様がありました。[写真4]

・小楯板の後紋は赤褐色
小楯板(しょうじゅんばん)は[写真4]の位置です。
黒色の中の赤褐色なので,赤褐色の紋があるのかないのか微妙です。

・各腹背板後縁の黄帯は幅広く波状をなさず
各腹節にある黄帯は,波をうたずに同じ幅で腹節を取り巻いています。[写真5]
ヒメスズメバチやキイロスズメバチは,黄帯が波打っています。

・尾端節は全く黄色
尾端節(第6腹節)には色帯がなく,全部黄色です。[写真5]
ヒメスズメバチやチャイロスズメバチは腹端が黒色です。

・第1腹背板水直部は通常大部分赤褐色
「水直部」の意味がわかりませんが,第1腹背板の前部,断ち切られたような形状をした部分のことを言っているのだと思います。
確かに黒色ではなく,赤味をおびています。[写真5]

・第2腹背板基部両側に1対の黄ないし褐色の大斑を持つ個体は♀および♂に多い
第2腹背板の基部に「黄ないし褐色の大斑」はありません。[写真6]

・前肢は大部分黄色。中・後肢は黄褐色ないし黒色。
[写真2]

・頭楯前縁の2大歯間には1小歯あるいは1小隆起がある
頭楯の下の突起は3個あります。[写真7]
模様のよく似たオオスズメバチは,頭楯下の突起は2個です。[写真8]

写真を見ていて気づいたのですが,腹部の節と節の間から何かが顔を出しています。[写真6]
噂に聞く,ネジレバネのなかまのようです。
ネジレバネのなかまは他の昆虫の体内に寄生して生活しているそうです。
ピンセットで引っぱりだしたいところですが,残念ながらすでに現物は廃棄してしまいました。
もっと早く気づいていればよかったです。
ネジレバネについては,また機会があれば観察したいと思います。

コガタスズメバチの巣
チャイロスズメバチ 
オオスズメバチ
キイロスズメバチ
クロスズメバチ
ヒメスズメバチ