トゲナナフシ(♀)です。
昨秋,町内の道を歩いていたのを捕まえました。
死んでいるのかなと思うぐらいじっと動かなかったのですが,いつの間にか本当に死んでいました。
腹部が黒く変色しています。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)にはトゲナナフシについて,次のように書いてありました。

 体長♀ 61~72mm。光沢のない汚褐色で,背面には瘤状小隆起を散布する。前胸背板前縁に1対の長い突起があり,他にも数対の小さな突起をもつ。中胸背面はその正中線に沿って前・中・後部にそれぞれ1対の棘を有し,中央部の両側の近くにはさらに1対の棘を具える。後胸背の中央にも左右近接する1対の棘がある。各腹背板の後縁近くには1対の小さな棘と,その直後の後縁の中央に扁平な突起をもつ。それらの棘は尾端節に向かうに従い,扁平突起は基節に向かうに従って退化の傾向にある。

成虫は中秋から晩秋にかけて採集されるが,雑多な植物の葉を食する。木の高い部分には発見されず,むしろ,山道の両側の草の生えた土面などで見出される。

前胸背板前縁に1対の長い突起があり」とありますが,この個体には突起物らしきものはありません。[写真7]
以前に捕まえたトゲナナフシの写真で確認すると,確かに1対の棘があります。[写真8]
ネット上のトゲナナフシの画像を見ても,前胸背板前縁の棘はあるものとないものがあるようです。

木の高い部分には発見されず,むしろ,山道の両側の草の生えた土面などで見出される」。
この付近でトゲナナフシを見つけるのも,ほとんど道の上や道脇の草の上です。

ナナフシは,種類によって単為生殖することが知られています。
トゲナナフシも日本で見られるものはほとんどがメスで,オスが発見された例は1~2匹しかないそうです。

平凡社『日本動物大百科 昆虫Ⅰ』(1996年)には,ナナフシの生殖について,次のように書いてありました。

なお,これまでオスがまったく見つかっていない種として,ヤスマツトビナナフシ,シラキトビナナフシ,タイワントビナナフシ,ヤエヤマツダナナフシなどがある。またナナフシモドキ,トゲナナフシなどはほんの1~2匹しかオスが見つかっていない。これらは単為生殖しているものと思われるが,実際に飼育実験でもそれが確認されている。
 しかし雌雄ともに見られる種類,たとえばアマミナナフシやコブナナフシなどでも,そのふ化率はごく小さいとはいえ,単為生殖が可能であることが確認されている。

ところが,数年前にトゲナナフシの野生のオスが発見されたそうです。
それも京都で。
朝日新聞のデータベースに載っていた記事は,次のとおりです。(2009年9月28日朝日新聞。京都新聞でも捜しましたが,この件は記事になっていないようです。)

 野外ではメスしか見つかっていなかった草食性の昆虫,トゲナナフシのオスを,京都府京田辺市の介護施設職員西川政文さん(38)が同府南部の林道脇で見つけた。ナナフシの世界では非常に珍しい「草食系男」の発見に,専門家も驚いている。
小枝や枯れ草に姿を似せて身を隠すことで知られるナナフシは国内に約20種いる。トゲナナフシは体中にトゲがあるのが特徴で,西日本を中心に分布する。ナナフシの仲間にはメスだけで卵を産む種やオスがほとんど見つからない種が多い。その理由は分かっていない。トゲナナフシも飼育下では1977年にオスが確認され,専門誌に報告されたが,野外では見つかっていなかった。
 虫好きの西川さんは8月14日,林道脇で見つけた。これまで採集したトゲナナフシのメスは体長6~7センチ。今回は4.5センチと小さく,「オスでは」と直感したという。
 「ナナフシのすべて」などの著作がある名古屋市の昆虫研究家岡田正哉さん(66)に鑑定してもらい,交尾の際にメスを固定する器官があることなどからオスと確認された。岡田さんは「やっぱりオスがいたか,とワクワクした。オスはどうやって増えるのか,このオスと交尾したメスの卵からまたオスが生まれるのか,とても興味深い」と話している。

ほんとに「とても興味深い」です。
これからは,トゲナナフシを見つけたら,オスでないか確かめなければなりませんね。