オニヤンマの羽化殻をもとに,ヤゴの体のつくりを調べてみました。
オニヤンマの成虫が日本最大種なら,ヤゴも日本最大です。
表皮はキチン化が進み厚くて硬いので,羽化殻もしっかりしています。

北海道大学図書刊行会『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑 』(1999年)には,オニヤンマの幼虫について次のように書いてありました。

●頭部

頭部は横長の箱形で,頭幅は頭長の2倍ほどある。

……[写真3]は,頭部を上から見たところです。頭幅は頭長の1.8倍ほどあります。

額の前縁は台状にはりだして放射状に列生した剛毛で縁どられる。

……[写真3]の,触角と触角の間,縁に短い毛が生えている部分が額だと思います。

複眼は小さく,頭部の前側角にあって上側方へ球状に小さく突出し,頭部の前側角が強く角張る。

……[写真2]。複眼はそんなに小さいとは思わないのですが,成虫の複眼の大きさに比べるととても小さいといえます。水中では,そんなに大きな複眼は必要ないようです。

触角は細くムチ状で短いが,ミナミヤンマ属よりはやや長い。

……[写真3]
●下唇

下唇基節はすこぶる大きなスプーン形で平常は頭部の下面と前面をおおい,一見パワーショベルのような感じがする。

……[写真4]

中片の中央に1対の先端が外むきに開いたクチバシ状の突起と,その外側にもう1個微小な歯状突起がある

……[写真7]

腮刺毛は10本内外で,外寄りの6,7本が長く,内側の4,5本が短い。短い刺毛は内側のものほど短い。

……[写真6]

側片は幅の広い三角形で,前縁が大きさの不ぞろいな9~ll本の牙状突起になるが,この牙状突起はミナミヤンマ属に比べると切れ込みが浅い。側刺毛は6本で,前寄りほど少しずつ短くなる。

……[写真6]

可動鈎は細くて短い。

……[写真2]
●胸部

胸部は前胸が小さく幅広のいびつな長方形で,背板の前縁がわずかに反り返り側線が側方へ強くはりだして突出して剛毛で縁どられる。

……[写真8]

翅胸はやや縦長の厚みのある直方体で,第1・第2側縫線が強く圧迫されて中胸前側板の稜が強くもりあがる。

……[写真8]。前肢が出ているところが前胸,中肢が出ているところが中胸,後肢が出ているところが後胸ですが,中胸と後胸は合体して一つになっているので,合わせて翅胸とか合胸といわれています。

翅芽はミナミヤンマ属に似て大きく八の字形に開く。

……[写真9]

背面から第1節が垣間みえるが,開度はミナミヤンマ属よりやや狭く,先端が腹部第5節後縁近くの側線に達する程度。

……[写真9]

肢はミナミヤンマ属よりやや太短い。

……[写真9]
●腹部

腹部は細長い紡錘形。第5・6節が最も幅広で以降が徐々に細まるが,側線のふくらみは弱く,ほぼずん胴に近い。

……[写真9]

第8・ 9節に先端がやや内側をむいて短く尖る側棘がある。

……[写真10]
●肛錐

肛錐は細長い三角錐状で鋭く,ミナミヤンマ属より明らかに長い。

……[写真12]

肛上片は細長く,正中線が低い稜状を呈し,側線に長毛が密生する。

……[写真13]

♂の肛上片背面にある前下付属器の突起は基部寄り1/3あたりにあって軽く側方へ隆起する。肛側片は肛上片とほぼ同長かわずかに長く,尾毛は肛側片の1/4程度。いずれも先端が鋭く尖る。

……[写真12]

♀の原産卵弁は2片からなって長く伸長し,先端が腹部第10節の前縁に達するかわずかにこす

……本個体は♂なので原産卵弁はありませんが,成虫になった時に副性器になる部分(原副性器)が腹部第2,3節腹側にあります。[写真14]