歩道の上にスズメが横たわっていました。[写真1]
片方の脚が,震えるようにかすかに動いています。
外傷はなさそうです。
寿命なのでしょうか。

鳥インフルエンザが少し心配でしたが,袋に入れて持ち帰ることにしました。
この日の朝は少し冷え込んだので,気温が上がれば元気になるかとも思ったのです。
しかし,家についてみると完全に息絶え,硬直が始まっていました。

鳥を手にとって観察できることはあまりありません。
この機会に翼の羽を調べてみました。
鳥の翼の羽は,大きく分けると,風切(かざきり),雨覆(あまおおい),小翼羽(しょうよくう)に分けられます。[写真2]
世界文化社『日本の野鳥羽根図鑑』(2011年)には,次のように書いてありました。

風切羽
翼の骨格の後ろ側に直接付いている丈夫な羽毛であり,翼の後縁を形作り,飛翔のとき,重要な働きをする。

初列風切羽
風切羽のうち,掌骨と第2指の指骨に付いているものをいう(Primaries)。

次列風切羽
尺骨に付いているものをいう(Secondaries)。

三列風切羽
次列風切羽より内側にあり階段状になっている羽をいう(Tertiariess)。

小翼羽
この小さな羽は第一指骨に生えている羽毛で,もとは初列風切と対等の性格のものであるが,現在は短小な数枚の羽毛に過ぎない。しかし,滑空グライディングをする時,安定度に対して何らかの役割をしているといわれている(Alula)。

雨覆
これは初列,次列とは性格を異にし,皮膚に生えているもので,風切羽の基部を覆い守り,かつ翼の前縁をなしている。なお,雨覆には上雨覆Upper Wing Coverts (翼の上面のもの)と下雨覆Under Wing Coverts (下面のもの)がある。初列雨覆Primary Coverts,大雨覆Greater Coverts,中雨覆Median Coverts,小雨覆Lesser Covertsに分けられる。

風切羽にはそれぞれ番号がついています。
初列風切羽は,胴体側から翼端に向かって1,2,3……と番号がふられ,次列風切羽と三列風切羽は,逆に翼端側から胴体に向かって1,2,3……と番号がふられています。
番号をふる方向が逆になっているのは,どうしてでしょうね。
山階鳥類研究所『鳥類標識マニュアル』(2008年)には,次のように書いてありました。

初列風切は掌骨と第2指に付着し,多くの種では9~11 枚であるが,3~6 枚の種もある。
初列風切は内側(胴体に近い方)から外側(翼の先端)に向かって順に第1羽,第2羽,第3羽……と呼ぶ。これにより初列風切の枚数が異なる場合や,最外初列風切がごく短い場合でも各初列風切を同一名称で呼ぶことができる。

内側から外側に向かって1,2,3……と番号を付けておけば,鳥の種による枚数の違いにも対応できるということのようです。
鳥の種により初列風切羽の枚数が異なるのは,翼端の羽が退化している,あるいは増えていると考えるということでしょうか。

次列風切と三列風切は尺骨に付着し,枚数は6~40枚と多様である。スズメ目の鳥では一般に9~11枚あり,そのうちの胴体に近い方にある3~5 枚を,三列風切という。次列風切と三列風切を区別しない場合は,初列風切第1 羽の隣に位置している最も外側の次列風切から内側に向かって順に連続番号を付けて呼ぶ。

三列風切を区別する場合は,スズメ目の次列風切は第1羽から第6羽までとなり,次列風切第6羽の内側に隣接する最外三列風切から順に内側に向けて三列風切の第1羽,第2羽と昇順に呼ぶ。

次列風切と三列風切も同じように,種による枚数の違いに対応するため,こちらは外側から内側に向かって昇順に番号が付けられているということのようです。

[写真2]を見ると,初列風切羽は9枚,次列風切羽は6枚,三列風切羽は3枚あります。
羽を抜いて,翼端から順に並べてみました。[写真3]
翼端の,風を切り裂くような鋭利な形から,胴体側に向かって,徐々に幅広く四角い形に変化していくのが分かります。

[写真8][写真9]は,尾羽を写したもの。
スズメの尾羽は12枚あるはずですが,この写真では確認できません。
上記『鳥類標識マニュアル』には,鳥の写真撮影例も載っていて参考になります。
尾羽はもっと広げて,数が確認できるように撮影すべきでした。