分枝もせずに真っすぐに伸びた茎に,白い壺形の花がたくさんついていました。[写真1]
アセビの花に似ていますが,葉っぱが違います。[写真2]
細長い,けっこう大きな葉です。

図鑑で名前を調べると,イズセンリョウでした。
伊豆の伊豆山神社に由来するとか。

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,イズセンリョウについて次のように書いてありました。

関東南部以西の暖地に分布し,山地の木かげにはえる雌雄異株の常緑低木。茎は分枝少なく,高さ1mほどとなる。葉は互生し柄があり,長楕円形で先はとがり,ふちに波状のあらいきょ歯がある,長さは6~15cm,かしの葉のような感じがある。初夏,葉のわきに長さ1~3cmの総状花序を出し,短かい花柄をもった小さい花を多数つける。花冠は筒状で長さ約5mm,筒の先は浅く5裂する。がく片は5個,雄しべは5本,雌しべは1本。果実は球状で径約5mm,残存する花冠につつまれ白色である。 〔日本名〕伊豆セソリョウは伊豆の伊豆山神社の社林の中に多いために名ずけられた。

・茎は分枝少なく,高さ1mほどとなる
地面から細い茎が,斜めに伸びていました。
生育の悪い株だと思っていましたが,これが本来の樹形のようです。

・葉は互生し柄があり,長楕円形で先はとがり,ふちに波状のあらいきょ歯がある,長さは6~15cm,かしの葉のような感じがある
常緑樹らしく,葉の表面に光沢があります。[写真8]
裏面には,主脈が盛り上がっています。
[写真10]は,似ているといわれるアラカシの葉。

・葉のわきに長さ1~3cmの総状花序を出し,短かい花柄をもった小さい花を多数つける
[写真3]

・花冠は筒状で長さ約5mm,筒の先は浅く5裂する。がく片は5個,雄しべは5本,雌しべは1本
イズセンリョウは雌雄異株のはずです。
しかし,[写真5][写真6]の花の断面を見ると,雄しべも雌しべもあり,両性花にしか見えません。
雄しべの葯からは花粉が出ていて,雄性生殖器としては機能しているようです。

[写真7]は,花冠が脱落した後の状況。
丸々と膨らんだ子房は,いかにもこれからどんどん大きくなって,果実に成長しそうな感じがします。
この花は雄花,雌花どちらなのでしょうか。

ネットで色々と探してみると,イズセンリョウの雄花と雌花の写真がありました。
花冠から覗いた写真を見ると,雄花は5個の葯が,雌花は3裂した柱頭が見えています。
雄花と雌花では,花柱の長さが違うようです。
雄花では花柱が短く柱頭は雄しべより低い位置に,雌花は花柱が長く柱頭は雄しべより高い位置にあります。

この花の花柱は短いので,雄花ですね。
いかにも膨らんできそうな子房も,これ以上大きくはならないようです。
どうりで,この場所を毎朝通っているのに,実がなっていたという記憶がないはずです。