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[写真1]2018/5/1
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[写真2]
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[写真3]
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[写真4]
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[写真5]
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[写真6]
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[写真7]
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[写真8]
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[写真9]前肢腹面
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[写真10]後肢腹面
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[写真11]
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[写真12]
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[写真13]
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[写真14]
歩道にカエルが座っていました。[写真1][写真2]
緑色をした中型のカエルです。
近づいても動きません。
じっと前を見ています。
よく見ると,転げまわったように,体中に小さなごみがたくさんくっついています。
何があって,ここにいるのでしょうか。
本州で緑色のカエルは3種類います。
ニホンアマガエル,モリアオガエル,シュレーゲルアオガエル。
『山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル』(2015年)によると,この3種類の見分け方は,
・ニホンアマガエル
鼻先から鼓膜にかけて黒い線が入る。鼻先がすとんと切れ落ちたようになっている。
・モリアオガエル
鼻から目にかけて黒い線が入らない。鼻先が尖っている。白目の部分が赤みががかる。
・シュレーゲルアオガエル
鼻から目にかけて黒い線が入らない。鼻先が尖っている。白目の部分に赤みがない。
この見分け方からすると,「鼻先から鼓膜にかけて黒い線」はないのでニホンアマガエルは除外されます。
次に,白目の部分の色ですが,このカエルの眼は一見すると金色に見えます。
「白目の部分が赤みががかる」かどうか判然としません。
色々な写真を見比べてみると,[写真8]は「白目の部分が赤みががかる」というもののようで,このカエルはモリアオガエルということになります。
眼の色以外に,モリアオガエルとシュレーゲルアオガエルの見分け方はないのか,文一総合出版『日本カエル図鑑』(1999年)に詳しい解説が載っていたので,両種の特徴を表にまとめてみました。
モリアオガエル | シュレーゲルアオガエル | |
体形 | 体は比較的大きく,後方にむかってしだいに細くなる。 | 体は比較的小さく,後方にむかって細くなる。 |
頭幅 | 頭幅は体長の34%ほどで頭長よりも大きい。 | 頭幅は体長の34%ほどで頭長よりも大きい。 |
頭部 | 頭部は背面観では♂で弱く尖り,♀ではややにぶく,側面観ではゆるく傾斜する。 | 頭部は背面観では♂で弱く尖り,♀ではややにぶく,側面観ではゆるく傾斜する。 |
眼鼻線 | 眼鼻線は鋭く明瞭なことが多い。 | 眼鼻線は明瞭。 |
頬部 | 頬部は強く傾斜し,少し凹む。 | 頬部はやや強く傾向し,少し凹む。 |
吻長 | 吻長は上眼瞼長と等しいか,それより大きく,眼前角間より小さい。 | 吻長は上眼瞼長よりも大きく,眼前角間とほぼ同長。 |
外鼻孔 | 外鼻孔は吻端と眼の前端とのほぼ中央ないし,吻端寄りにある。 | 外鼻孔は,吻端と眼の前端とのほぼ中央にある。 |
上眼瞼の間 | 左右の上眼瞼の間は平坦で,その間隔は上眼瞼の幅よりはるかに大きい。 | 左右の上眼瞼の間は平坦で,その間隔は上眼瞼の幅よりはるかに大きい。 |
外鼻孔の間隔 | 左右の外鼻孔の間隔は,眼からの距離より大きく,上眼瞼間の幅より小さい。 | 左右の外鼻孔の間隔は,眼からの距離より大きく,上眼瞼間の幅より小さい。 |
鼓膜 | 鼓膜はほぼ円形ないし垂直方向の短楕円形で,直径は眼径の半分ないしそれよりやや大きい。 | 鼓膜はほぼ円形で,直径は眼径の半分よりやや小さい。 |
鋤骨歯板 | 鋤骨歯板はかなり長い楕円形で弱く斜向し,その中心は左右の内鼻孔の後端を結んだ線よりずっと前方にある。 | 鋤骨歯板は長楕円形で弱く斜向し,その中心は左右の内鼻孔の後端を結んだ線上,またはやや前方にある。 |
歯 | 各歯板には5-12個の歯をそなえている。 | 各歯板には7-8個の歯をそなえる。 |
手腕長 | 手腕長は♂で体長の51%,♀で55%ほど。 | 手腕長は♂で体長の48%,♀で49%ほど。 |
脛長 | 脛長は雌雄とも体長の43%程度。 | 脛長は♂で体長の37%,♀で40%程度。 |
前肢(指端) | 前肢指端は膨大し,吸盤となっている。 | 前肢指端は膨大し,吸盤となっている。 |
前肢(吸盤) | 吸盤は周縁溝をもち,第3指のものが最大で,鼓膜の直径と同大かそれより大きいが,第1指の吸盤は小さい。 | 吸盤は周縁溝をもち,第3指と第4指のものがほぼ同幅で,鼓膜の直径よりわずかに小さい程度だが,第1指の吸盤は小さい。 |
前肢(指長) | 第3指が最長で第1指が最短,第4指は第2指より長い。 | 第3指が最長で第1指が最短,第4指は第2指より長い。 |
前肢(みずかき) | 各指間にみずかきが比較的よく発達する。 みずかきは第1指外縁で関節下隆起に,第2指の外縁と第4指内縁では末端関節に達する。 第3指では内縁で近位関節下隆起と遠位関節下隆起の間に,外縁で遠位関節下隆起に達する。 |
各指間にみずかきをもつが,切れこみは比較的深い。 みずかきは第1指と第2指の間では基部のみにあり,第2指の外縁で関節下隆起に,第4指内縁でも遠位関節下隆起に達する程度。 第3指では内縁で近位関節下隆起に,外縁で遠位関節下隆起に達する。 |
前肢(内掌隆起) | 内掌隆起は長い楕円形で偏平に近い。 | 内掌隆起は楕円形で扁平に近い。 |
前肢(中手部) | 中手部に過剰隆起をもつ。 | 中手部に過剰隆起をもつ。 |
後肢(趾端) | 後肢趾端も膨大し,前肢のものより小さい吸盤となっている。 | 後肢趾端も膨大し,前肢のものより小さい吸盤となっている。 |
後肢(吸盤) | 吸盤は第4趾のものが最大で,第5趾のものがやや小さく,第1,2趾のものはかなり小さい。 | 吸盤は第4趾のものが最大で,第5趾のものがやや小さく,第1,2趾のものはかなり小さい。 |
後肢(みずかき) | 趾間のみずかきは比較的発達し,切れこみはふつう。 みずかきの幅広い部分は,第1趾から第3趾の外縁と,第5趾の内縁では,通常吸盤基部に達し,第4趾では内外線とも,遠位関節下隆起ないし末端関節に達する。 |
趾間のみずかきはそれほど発達せず,切れこみは比較的深い。 みずかきの幅広い部分は,第1趾から第3趾の外縁と第5趾の内縁では,通常末端関節に達し,第4趾では内外線とも遠位関節下隆起に達するのがふつう。 |
後肢(内蹠隆起・外蹠隆起) | 内蹠隆起は卵形でよく隆起するが,外蹠隆起は不明瞭で認められないことが多い。 | 内蹠隆起は卵形でやや隆起し,外蹠隆起はそれほど隆起しないが円形でかなり大きい。 |
脛?関節の位置 | 後肢を体軸に沿って前方にのばしたとき,脛?関節は雌雄とも鼓膜の中心ないし,眼の中心の水準に達する。 後肢を体軸と直角にのばして膝関節を折りまげると,左右の脛?関節は多少とも離れる。 |
後肢を体軸に沿って前方にのばしたとき,脛?関節は鼓膜の中心ないし眼の後縁に達する。 後肢を体軸と直角にのばして膝関節を折りまげると,左右の脛?関節は大きく離れる。 |
体表 | 背表の皮膚は鮫肌状で細かい顆粒におおわれ,ことに上眼瞼の後半部,肘の周囲,後肢背面では顆粒が顕著。顆粒の頂点は白く,やや尖る。 のどから胸にかけての皮膚は弱く小さい顆粒に,それより後ろの腹面はより大きく粗雑な,多角形の顆粒におおわれる。 |
背表の皮膚はほぼ平滑。 のどから胸にかけての皮膚は微細な,それより後ろの腹面はより大きく粗雑な,多角形の顆粒におおわれる。 |
鼓膜背側隆条 | 背側線隆条は無いが,鼓膜背側隆条は太く明瞭。 | 上唇縁後部と前肢基部の間に隆条をもたず,背側線隆条もないが,鼓膜背側隆条は太く明瞭。 |
皮膚ひだ | 前肢外縁には,第4指吸盤の基部から肘の内側まで続く弱い皮膚ひだがあり,後肢外縁にも第5趾吸盤の基部から脛?関節まで続き,後者の内側で終わる弱い皮膚ひだがある。 | 前肢外縁には,第4指吸盤の基部から肘の内側まで続くごく弱い皮膚ひだがあり,後肢外縁にも第5趾吸盤の基部から脛?関節まで続き,後者の内側で終わるごく弱い皮膚ひだがある。 |
成体の体長 | 成体の体長は♂で42-60(平均57)mm,♀で59-82(平均72)mmで,♀は♂よりも著しく大きい。 | 成体の体長は♂が32-43(平均35)mm,♀が43-53(平均46)mmで,♀は♂よりも著しく大きい。 |
鳴嚢 | ♂は咽頭下に単一の鳴嚢をもつ。鳴嚢孔は1対の長いスリット状で,顎関節内側から下顎中央にかけて斜向する。 | ♂は咽頭下に単一の鳴嚢をもつ。鳴嚢孔は1対の長いスリット状で,顎関節内側から下顎中央にかけて斜向する。 |
婚姻瘤 | ♂の婚姻瘤は灰黄色の顆粒からなり,前肢第1指の背側で基部から,吸盤基部にかけて発達し,第2指背側の一部にも発達する。 | ♂の婚姻瘤は黄白色の顆粒からなり,前肢第1指の背側で基部から吸盤基部にかけて発達し,第2指背側の一部にも発達する。 |
他のアオガエル類同様,第1指内側の中手部はやや扁平だが,その程度は♀で強い。 | ♂ののどは黒色素におおわれる。 |
こうして見比べてみると,形態的特徴はほとんど一緒です。
目立つ違いは,モリアオガエルの方がみずかきが発達していることと,体のサイズが大きいことくらいです。
体のサイズは,本個体のように50mm前後のものはどちらにも当てはまります。
もともと,モリアオガエルはシュレーゲルアオガエルの変種として扱われていたようです。
前書には次のように書いてありました。
当初,シュレーゲルアオガエルの2変種,モリアオガエルvar.arborea (基準産地は京都府衣笠国有林) ,キクアオガエルvar.intermedia (同佐渡河原田)として記載されたが,東京大学にあった基準標本は戦災で消失した。両者とも後に亜種に昇格し,さらにキタアオガエルはモリアオガエルに含められた。しかし,シュレーゲルアオガエルと同所的に生息しており,また交配実験では受精が起こらないか,胚が発生初期に死亡するので,本種は独立種とみなせる。東北日本産の個体群は体が小さく,暗色斑紋を欠くなどの特徴があるが,十分に調査されていない。
形態的特徴はよく似ていますが,鳴き声は全く違います。
・モリアオガエル
カララ・カララ……と聞こえ,コロコロという後鳴きが続く。
・シュレーゲルアオガエル
リリリリ……と聞こえる。
産卵場所も異なります。
・モリアオガエル
♀は水上に突き出た高さ5mほどまでの樹の枝や葉,草の上,地上に,2時間ほどかけてクリーム色で泡状の卵塊を産む。
・シュレーゲルアオガエル
♀は穴や土の窪みに入ってそこにクリーム色で泡状の卵塊を産む。