ソメイヨシノの花がほぼ散り,今度はウワミズザクラが満開です。今年はソメイヨシノの開花が記録的に早くて話題になりましたが,ウワミズザクラも例年より20日ほど早く咲き始めました。

ウワミズザクラ
ウワミズザクラ[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(花序)
ウワミズザクラ(花序)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]

ウワミズザクラの花はブラシのような総状花序で,どう見てもサクラの仲間には見えません。一つひとつの花を見ても,小さいだけでなく花弁に比べて蕊が長すぎてサクラの花には見えません。植物学的な分類では確かにサクラの近縁になっていて,葉も樹肌もサクラの仲間に見えるのですが,花を見るとどうしてもサクラの仲間には見えないのです。そんな木に昔の人はなぜサクラの名をつけたのか不思議です。何よりもサクラの花を愛でる国民性のはずなのに。

ウワミズザクラ(花序)
ウワミズザクラ(花序)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(花序)
ウワミズザクラ(花序)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]

『日本の野生植物』の検索表では,バラ科のうち「心皮は1個,果実は核果」のものを4属に分けています。

D. 葉は常緑性で革質 ……バクチノキ属
D. 葉は落葉性で革質
 E. 花は12個以上が長い総状花序につく ……ウワミズザクラ属
 E. 花は単性または12個以下が散形ないし短い総状花序につく
  F. 果実に溝がある。花序は単生ないし2~4花の散形花序 ……スモモ属
  F. 果実に溝がない。花序は散形,散房ないし散状の総状花序 ……サクラ属

ウワミズザクラ(花)
ウワミズザクラ(花)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(花)
ウワミズザクラ(花)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]

『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ウワミズザクラについて次のように書いてありました。

1167. うわみずざくら(こんごうざくら) 〔ばら科〕
Prunus Grayana Maxim.
各地の山野にはえる落葉高木で高さ10m内外。樹皮は褐紫色,枝上の小枝は晩秋から初冬に落葉した直後に多く脱落するという特性があってそのため落痕は枝上に節くれ立つ。葉は有柄で互生し楕円形,先端は急に細くなり,尾状に長くとがる。基部は円形,時にわずかに心臓形,長さ6~9cm,幅3~5cm,若い時には葉脈に毛があるが,成葉では殆んど無毛となり,ふちにはとげ状の細きょ歯がある。葉は乾けば膜質。 4~5月頃,小枝の先に長さ10cm,幅2cmぐらいの総状花序を出して多数の有柄の小形の白色花を密生して開く。がくは広いつりがね型で無毛。浅く5裂し,裂片は小形の三角状で全縁,内面に毛布状の毛があり,雄しべとともに花托から脱落する。花弁は5,倒卵形,水平に開き,後にはそりかえる。雄しべは多数で花弁よりもずっと長い。核果は楕円状球形。鋭頭,はじめ黄色に熟し,後には黒くなる。長さ9~7mm。未熟で緑色のものを塩漬けにして,食用とする。 〔日本名〕ウワミゾザクラ(上溝桜)の転訛したものである。昔亀甲で占いを行う時,この材の上面に溝を彫って使ったので上溝という。 ハハカは古名,コソゴウザクラは,ハハカ,ホウカ,ホウゴウサクラ,コソゴウザクラの順に転訛したもの。

・花弁は5,倒卵形,水平に開き,後にはそりかえる。雄しべは多数で花弁よりもずっと長い。

ウワミズザクラ(花・断面)
ウワミズザクラ(花・断面)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]

・がくは広いつりがね型で無毛。浅く5裂し,裂片は小形の三角状で全縁,内面に毛布状の毛があり,雄しべとともに花托から脱落する。

ウワミズザクラ(花・裏側)
ウワミズザクラ(花・裏側)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]

・葉は有柄で互生し楕円形,先端は急に細くなり,尾状に長くとがる。基部は円形,時にわずかに心臓形,長さ6~9cm,幅3~5cm

ウワミズザクラ(葉)
ウワミズザクラ(葉)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(花序・蕾)
ウワミズザクラ(花序・蕾)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(蕾)
ウワミズザクラ(蕾)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(蕾・断面)
ウワミズザクラ(蕾・断面)[ in夷谷町 on2023/4/7 ]
ウワミズザクラ(幹)
ウワミズザクラ(幹)[ in夷谷町 on2011/4/30 ]