頭をつつくと,とたんに逆走をはじめました。ギアをバックに入れたように,そのままどんどん進んでゆきます。変な虫ですね。こんな風に前進,後進を自由自在に行える生き物はそんなに多くありません。
第一,どちらが頭でどちらがお尻かも,見た目からははっきりしません。両方に頭のような膨らみがあり,触覚のようなものが生えています。眼もどちらかにしかないはずですが,逆行しても見えているかのように不自由なく動き回っています。

ジムカデ
ジムカデ[ in夷谷町 on2023/9/16 ]
ジムカデ
逆走するジムカデ[ in夷谷町 on2023/9/16 ]

名前を調べてみると,ジムカデの仲間のようです。
世界大百科事典(第2版)にはジムカデについて,次のように書いてありました。

唇脚綱(ムカデ綱)ジムカデ目Geophilomorphaに属する節足動物の総称。体長1~6cm。ミミズのような細長い体形で多数の足をもち,ふつう地中に生息している。褐色または朱色の頭には短い触角が1対あるが,眼は無い。胴は31以上約177の胴節からなり,各胴節に1対ずつの短い歩肢がある。体は黄色で,伸縮自在に蛇行運動をし,前進と同様に後退も自由にできる。トビムシ,ミミズ,クモなどを食べる。初夏のころに産卵し,雌は数十個の卵を抱えて保護する。

「眼は無い」とあります。体の両端に眼があるのではなく,両方にないという意外な構造でした。
確かに,頭部を見ても眼らしきものが見当たりません。「ふつう地中に生息している」ので,ミミズと同じように眼が退化しているのでしょうか。

ジムカデ(頭部:上面)
ジムカデ(頭部:上面)
ジムカデ(頭部:下面)
ジムカデ(頭部:下面)

「前進と同様に後退も自由にできる」。やはり,これが特徴の一つのようです。「地中に生息」していると,後進もできないと行き詰まってしまいますよね。

「胴は31以上約177の胴節からなり,各胴節に1対ずつの短い歩肢がある」。
胴節を数えると,63節ありました。1節から1対ずつ歩肢が出ているので,肢の数は126本になります。
(よく似るヤスデの類は1つの体節から2対の歩肢が出ています。)

ジムカデ
ジムカデ
ジムカデ(体節)
ジムカデ(体節)

最後の節の歩肢は曳航肢と呼ばれ,歩行には使用されず,触角のように動かして敵を惑わし,頭部を守る役目があります。
特にこのジムカデは最終節が膨らんで頭部のようになっているので,後ろ向きに進んでいるとどちらが頭か分からなくなります。

ジムカデ(最終節:上面)
ジムカデ(最終節:上面)
ジムカデ(最終節:下面)
ジムカデ(最終節:下面)