フユイチゴに赤い実がなっていました。キイチゴ類のおおくは春から夏にかけて実をつけますが,フユイチゴは名前のとおり冬に結実します。
瑞々しくておいしそうな液果なのですが,枝が地面を這って広がっているうえに大きな葉に隠れて,上から見下ろすとあまり目立ちません。
赤い色をした甘い液果をつけるということは被食散布をおこなう植物のはずです。種子散布者は誰なのでしょうか。一般的な鳥ではないような気がします。鳥に食べてもらおうとすれば,もっと枝を立ち上げ,空からの視認性を高めているはずです。
『本州以南の食肉目3種による木本果実利用の文献調査』という論文に,ツキノワグマ,テン,タヌキの糞中に発芽可能なフユイチゴの種が含まれていることが報告されています。特にテンは他の2種よりも液果を好む傾向にあるそうです。
東山にはツキノワグマはいませんが,テンなどのイタチの仲間やタヌキは多数生息しています。餌となる昆虫などが減少する秋から冬にかけて,ちょうど実がなるフユイチゴは絶好の食料になるに違いありません。フユイチゴの主な種子散布者は鳥ではなく哺乳類なのではないでしょうか。