アリアケスミレの花。「アリアケ」の名は,花の色が白色から淡紫色まで変化に富んでいるため,有明の空の色になぞらえてつけられたものだそうです。
「有明」は秋の季語です。
講談社「日本大歳時記」によると
『有明は,夜明け,明け方であって,その時分のほの明りの中に残っている月痕(げっこん)である。名月から何日も経っている月というのではなく,月もだんだん出が遅くなって翌朝の有明空に望むことのできる月である。』
でも,夜が明けるにつれ,モノトーンの世界がしだいに色づいてゆくのは,どんな夜明けにもおこることですよね。アリアケスミレの白い花を,夜明けの空に残る有明月になぞらえたのでしょうか?
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」には「アリアケスミレ(V.betonicifolia var.albescens)」として載っていますが,「牧野新日本植物図鑑」にはシロスミレの項に追記するかたちで載っていました。
(本屋さんで新訂版を確認してみたら,アリアケスミレとして独立した項目で載っていました。)
「牧野新日本植物図鑑」シロスミレの項
『次に本種に似て花はやや小さく,花弁の色は白からほとんど紫の近くまで変化し,紫のすじが多く,側弁,さらに著しいものでは上弁の内側にまで突起毛のあるものがわが国の低湿地によく見られるが,これをアリアケスミレ(V.oblongo-sagittata Nakai var.albescens Hashimoto) という。花の差だけでなく,高さは7cm内外,葉も数多く,葉柄は葉身と同長またはしばしば半分の長さになり,葉身は長三角形状卵形で基部は切形,両面とも光沢があり,花期には毛がない。根も白色である。日本のほか朝鮮,支那北部にあり,種としてはアジア南部に広く分布している。これはシロスミレと次種スミレとの雑種起源といわれている。』