5月3日にヤマガラのヒナが巣立ってから2,3日後,待ってたかのように,別の番(つがい)が巣箱に出入りするようになりました。
巣箱の中をのぞくと,産座(うぶざ)の材料にするための,細く引き裂いた樹皮や獣毛(犬の毛?)が運び込まれています。[写真2]
苔の土台は再利用し,ヒナたちのベッドとなる産座だけを新しく作り直すようです。

多くの鳥は古巣を再利用しません。
しかしシジュウカラなど自分で巣穴を掘れない二次樹洞営巣種は,古巣を利用することがよくあるそうです。
古巣の再利用には不吉な前例があります。
以前にシジュウカラが,前の番のヒナが巣立った直後に,古巣を再利用して産卵したことがありました。(→2010年5月19日
その卵は無事に孵化したものの,孵化後7日目に突然全部のヒナが死んでしまったのです。(→2010年6月20日)
病原菌なのか寄生虫なのか,突然全滅した原因がわかりません。
今回は無事に育ってくれるのを祈るばかりです。

最初の産卵は,5月9日でした。[写真3]
その後,毎日1個ずつ産卵し,最終的には5個の卵を産んだようです。
5月13日以降,親鳥が産座に座っているので,卵の数を確認することができません。
(→孵化後,確認したところ6個でした)

鳥は種によって,一つの巣に産みつける卵の数が決まっています。
1回の繁殖で産む卵の数を「一巣卵数」といい,ヤマガラは5~8個です。
前回の産卵数は6個でしたが,今回は5個のようです。
抱卵日数は約14日間なので,5月26日ごろに孵化するのではないかと思います。

小鳥は毎日1個ずつ卵を産みますが,産卵のつど毎回交尾するのかどうか,以前から疑問に思っています。
児童書ですが,PHP研究所『科学のおはなし 鳥・虫・魚のふしぎ』(2009年)に,鳥は受精してから卵を産むまでに,1日程しかかからないと書かれていました。

卵で産むことで鳥の体が軽くなったとはいっても,たくさんの卵が体の中にある間は,空を飛ぶことは難しくなります。しかし,鳥は交尾してから卵を産むまでの時間が短いので,空を飛ぶのに有利にはたらいていると考えられています。では,鳥の体の中で卵はどのようにつくられているのでしょうか?
 まず,めすの卵巣の中でひなの体の元になる卵黄(黄身)がつくられます。その後,「輸卵管」とよばれる管に送られ,ここでおすの精子とであって受精します。受精した卵は,卵白(白身)に包まれながら大きくなり,最後にからに包まれて総排泄孔から,外へと産み出されます。卵黄が卵巣を出てから外に出るまでの時間は,鳥の種類によって異なりますが,およそ一日から一日半しかかかりません。それだけ,短時間で卵を産むことができるのです。

これを読むと,毎朝産卵した後に,翌朝産む卵のために交尾するのかなと思えますが,下の記事を読むと,鳥の精子は雌の体の中で貯蔵されると書いてあります。

広島大学家畜生体機構学研究室『鳥の体あれこれ』

ニワトリやウズラは一度の交配で数日から数週間も受精卵を産みつづけます。これは卵殻腺部と腟部との境界の子宮腟移行部(utero-vaginal junction)と呼ばれる部位に精子貯蔵腺が存在して,精子が長期間生存できるからです.受精は卵管上部である漏斗部で起こります.

結局,ヤマガラが産卵ごとに交尾するのかどうか,わからないままです。