4月26日に採集したタゴガエルの卵塊は未受精卵だったようです。
1週間たっても孵化しませんでした。
しかし,卵塊とは別に1個だけ紛れ込むように入っていた卵が,孵化し順調に成長しています。
他とは違い黒っぽい色をしていたので,孵化しないだろうと思っていたら,逆にこれだけが孵化しました。

孵化までの様子をまとめてみました。
・採取当日(4月26日)
[写真1]はゼリー層に包まれた卵。
[写真2]はゼリー層を取り除いたもの。
卵割しているように見えませんが,細胞分裂が進んで肉眼で見分けられなくなった状態なんだろうと思います。

・採取後2日目(4月27日)
2本の筋がくっきりと盛り上がっています。[写真3]
2時間後の[写真4]では,2本の筋の間にあった隙間がなくなり,ぴったりとくっついています。
このふくらみが脊髄のもととなる神経板のようです。
さらに12時間後には,神経板に沿って細長い体ができ,先端には頭らしきふくらみがあります。[写真5]

偕成社『カエル観察事典』(1996年)には,カエルの卵の発生について,次のように書いてありました。(以下,引用は同書)

受精から3日目には,卵の背面に,神経板とよばれる平らなふくらみができます。神経板は,やがて脳や脊髄になる部分です。神経板のもりあがった左右のひだが,中央の溝をうめて,脊髄や脳の神経管をつくります。原口と反対側に,はば広くふくらんだ部分が,脳になります。脳になる部分が丸くふくらむと,丸い卵に頭ができてきます。
 神経板のなかに神経ができると,神経板にそってオタマジヤクシの体づくりがすすみます。丸かった卵も,神経板にそって長くなります。受精から4日目には,頭がふくらみ,ダルマのような形になります。この時期の卵をダルマ胚とよんでいます。ダルマ胚の頭の下の∨の字の切れこみは,口ではなく,吸盤になる部分です。ほおのふくらみは,やがて,エラになる部分です。

同書はヒキガエルを例にしていますが,タゴガエルの発生の進行はもっと早く進むようです。

・採取後3日目(4月28日)
尾が伸び,何となくオタマジャクシの形になってきました。[写真6]
尾芽胚(びがはい)といわれる状態だろうと思います。

受精から5日目になると,ダルマ胚の体が長くなり,尾がのびはじめます。さいしょは,こぶのようなふくらみですが,やがて長さもはばも増し,尾にそだちます。尾がのびて長くなった卵を,尾芽胚(びがはい)とよんでいます。このころになると,尾芽胚のオタマジヤクシが,卵のなかで体を回転する姿がみられます。卵の成長の速さは,カエルの種類や水温によって異なりますが,ヒキガ工ルの卵は, 1週間ほどで尾芽胚になり, 10日ほどで卵から誕生します。

・採取後4日目(4月29日)
頭のわきにエラが伸び始め[写真7],10時間後の[写真8]では,ウ―パール―パー(メキシコサラマンダー)のようにエラがはりだしています。
眼ができはじめています。[写真9]
体を動かしているものの,まだ透明な膜に覆われた卵の中です。

・採取後5日目(4月30日)
孵化しました。
長い尾をつかって,泳いでいます。[写真10]

 卵の透明な膜をとかして生まれてきたオタマジヤクシには,目も口もなく,泳ぎまわることもできません。頭の下の吸盤で,ぬけ殻になった卵かいや水草にぶらさがってくらします。頭のわきに生えたエラで水中の酸素を呼吸し,体内にのこされた卵黄の養分で,さらに体づくりをすすめます。長い尾をつかって,水のなかを自由に泳ぎまわるオタマジヤクシになるには,もう少し時間がかかります。
 吸盤でぶらさがってくらす,幼いオタマジャクシの体づくりがすすみます。 ∨字型の吸盤の上側に,オタマジャクシの口ができます。口には,藻や水草をけずりとってたべるための歯列が生えてきます。鼻の上には,白くにごった眼ができはじめます。やがて,尾が大きく成長すると,小さなオタマジャクシが水のなかを泳ぎだします。口ができると,オタマジャクシは,自分でえさをとってたべるようになります。小さなオタマジャクシが成長するにしたがい,外にでていたエラが,エラぶたでおおわれてかくされます。口の下の吸盤も小さく退化して,やがてきえてしまいます。

ヒキガエルは孵化直後は泳ぐことができず,吸盤で水草などにぶら下がって生活していますが,タゴガエルは孵化直後に泳ぐことができるようです。
[写真8]を見ても,卵の中ですでに長い尾ができ上がっています。

卵を採取した時の状況→2015年4月26日