アオキに花が咲いていました。
冬の間も青々と茂った常緑の葉に赤い実を付けて,はなやかな印象が強いアオキですが,花はとても地味です。
花びらが小さく,褐紫色という目立たない色をしているせいでしょうか。

雄花と雌花があり,それぞれ別の株につきます。
いわゆる雌雄異株といわれる植物です。
そういえば,アオキに限らず,今までにこのブログでとりあげた雌雄異株の花は,大体小さくて地味ですね。
アオモジ →ヤナギ →トベラ →アカメガシワ →ヒサカキ
サネカズラ →キンモクセイ →カツラ →フキ →ヒイラギ

虫を誘うのにあまり熱心ではないような,この花をどんな虫が訪れるのでしょうか。
風媒花ではないので,何かが花粉を雄花から雌花へ運んでいるはずです。
ネットで探すと,『アオキの花粉媒介様式―訪花者排除実験と訪花昆虫の観察による推定―』という論文がありました。
これによると,花粉媒介者は,ジョウカイボン及びゾウムシなどのコウチュウ目や,クロバネキノコバエなどの長角亜目であると推測されています。

一方,ゾウムシ,ジョウカイボンは多少の偏りはあるが雄株・雌株ともに訪花しており,以上のことから本調査地ではこの2種がアオキの花粉媒介者として寄与している可能性が高い。

クロバネキノコバエは雄株・雌株共に訪花しており,1mm未満のクラスでは1mmメッシュの網をかけた花序にも到達可能なことから,受粉に貢献している可能性が示唆された。

平凡社『日本の野生植物 木本Ⅱ』(1989年)には,アオキの花について次のように書いてありました。

3~5月,枝端に円錐花序をつけ,花は径8~10mm。花弁は4(~5)枚で平開し,長卵形で鋭尖頭,褐紫色。雄花序は大きく,長さ5~15cm,雄花は中央に花盤があり,雄蕊は4本,長さ約1mmで花糸は肥厚する。雌花序は小さく,長さ2~5cm,子房は角状,長さ約4mm,伏毛があり,花柱は長さ約1mmで太く,柱頭は円盤状。

・雄花序は大きく,長さ5~15cm
・雌花序は小さく,長さ2~5cm

[写真1]は雄花序,[写真2]は雌花序。
雄花序の方が大きくて花がたくさん付き,個々の花も雄花の方が雌花よりすこし大きいです。[写真3]

・雄花は中央に花盤があり,雄蕊は4本,長さ約1mmで花糸は肥厚する
花盤の中心には,退化した雌蕊の痕跡らしきものがあります。[写真5]

[写真5]の雄花には雄蕊が5本あります(花弁も5枚)が,これはたまたまだったようです。
本来は4本です。[写真3]

花糸とは雄しべの葯を支えている糸状の部分で,普通は名前のとおり細い糸のようなものですが,アオキの花糸は肥厚して,まるでバオバブの木のような寸胴な形をしています。
[写真6]は雄花の断面です。

[写真7]は雄花序についていた蕾です。
最初は未熟な果実かなと思ったのですが,切ってみると,雄花の蕾でした。[写真8]

・花柱は長さ約1mmで太く,柱頭は円盤状
「柱頭は円盤状」とありますが,[写真9]~[写真12]の柱頭は凸凹に盛り上がっています。
花粉が付着しているせいでしょうか。