シナマンサクの花が満開になっていました。中国原産のマンサクで,春一番に「先ず咲く花」として有名なマンサクより更に早く咲きます。マンサクの花とよく似ていますが,相違点は秋に枯れた葉がそのまま枝に残っていることです。枯葉を引っぱってみると,かなりしっかり枝についていることがわかります。
秋に枯れた葉が,落葉しないで枝に残ることを枯凋(こちょう)性といいます。ブナ科や,クスノキ科,マンサク科の落葉樹に見られる特徴です。同じマンサク科でも日本原産のマンサクは落葉し,中国原産のシナマンサクは枯凋性があるというというのは面白いですね。熱帯の常緑樹が枯凋性を獲得することにより温帯域まで分布を拡げていったという説と関連があるのでしょうか。
枯葉と枝との接合部を切ってみました。葉柄部分は茶色く変色していますが,しっかりと枝と接合しています。
変わった花です。ちぢれた糸くずのような黄色い花びらが4枚,一見,花弁がなく雄しべが露出しているように見えます。
真上から見ると,4個の黄色い花弁,4個の赤い萼,中央に2本の花柱をもつ雌しべ,そのまわりに4本の雄しべがあります。仮雄しべが4本あるのですがこの写真では見えません。
花柱のまわりにへら状の仮雄しべが4本あります。仮雄しべとは生殖機能のない退化した雄しべのことで,マンサクの場合は蜜を出しているといわれています。
開きかけている蕾。花弁は丸まって格納されています。
『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,マンサクについて次のように書いてありました。
990. まんさく 〔まんさく科〕
Hamamelis japonica Sieb.et Zucc.
全国の山地にはえ,また時に庭園に植えられる落葉の小高木。葉は互生し,ややゆがんだ形をした菱形状の楕円形あるいは倒卵形,先端は鈍形,基部は切形またははわずかに心臓形,長さ7~12cm,幅5~7cm,ふちは中央から上は波状のにぶいきょ歯を持ち,それより下部は全縁,質は厚くて上面は無毛,ややしわがあり,主脈と支脈は落ち込んでいる。下面は平滑で脈は隆起し,脈上には星状毛がある。支脈は主脈の両側に, 5~6本ずつある。葉柄は短かく,星状毛がある。春に,葉より先に開花し,黄色で葉腋に単生あるいはかたまってつく。がく片は4個,卵形でそりかえり,内面は無毛で暗紫色,外面には乳首状の毛が密生する。花弁は4個,線形,長さ1cm内外,雄しべは4本,非常に短かい。子房は2本の花柱をもっている。さく果は卵状球形で外面には短かい綿毛が密生し,二つに裂け,黒色の光沢のある種子をはじきとはす。 〔日本名〕満作の意味で,満作は豊作と同様,穀物が豊かにみのることをいい,この木が枝いっぱいに花を咲かせるので,このようにいう。またある人はマンサクを早春にまっ先に咲くの意味にとっている。 〔漢名〕金楼梅は誤まった名である。