「水路に取り残された魚」の過去記事を一つにまとめました。


2024年1月23日

碧雲荘横の水路の水量が減り,魚が取り残されていました。
ブラックバスが2匹,ニゴロブナ(?)が1匹,ニゴイが2匹(うち1匹はまだ生きていました)。ブルーギルはいません。

水路の水は琵琶湖から来ているので,生息する魚の種類は琵琶湖の生態系を反映しています。あれほど問題となったブルーギルは数を減らし,一方で同じ特定外来生物指定のブラックバス(オオクチバス)は現状維持です。

『MHK 関西NEWS WEB』(2023/3/10)
びわ湖の外来魚「ブルーギル」生息量激減か 滋賀県調査で判明
びわ湖で大繁殖していた外来魚、「ブルーギル」の生息量が16年間で7分の1に減ったとみられることが滋賀県の調査でわかりました。
ブルーギルは北米原産の雑食性の淡水魚で、びわ湖では1990年代から2000年代に大繁殖し、在来の魚の卵や稚魚を食い荒らすやっかい者として駆除の対象とされてきました。
滋賀県によりますと、びわ湖のブルーギルの推定の生息量は、16年前の2007年は1689トンに上りましたが、おととし(2021年)には223トンと、16年間で7分の1に減ったとみられることがわかりました。
その理由について滋賀県水産試験場は、▼各地の漁業者が継続的に駆除に取り組んできたことや、▼びわ湖に水草が減ったため隠れる場所が少なくなり、ブラックバスに食べられやすくなったことを挙げています。
一方、ブラックバスの推定の生息量は、おととしの時点で178トンで、2007年の444トンと比べると半分以下に減っていますが、ここ数年は大きく減らず、横ばい状態となっています。

ブラックバス
ブラックバス[ in南禅寺下河原町 on2024/1/23 ]
ブラックバス
ブラックバス[ in南禅寺下河原町 on2024/1/23 ]
ニゴロブナ(?)
ニゴロブナ(?)[ in南禅寺下河原町 on2024/1/23 ]
ニゴイ
ニゴイ[ in南禅寺下河原町 on2024/1/23 ]
ニゴイ
ニゴイ[ in南禅寺下河原町 on2024/1/23 ]

2023年1月30日

ここ数日,疎水分線の水量が減っています。疎水分線から分岐した碧雲荘横の水路(扇ダム放水路)も底が見えていました。泳げなくなった魚が所どころにとり残されています。ニゴイが2匹,オオクチバスが2匹,ニゴロブナが2匹。少し日が経っているのか,鳥につつかれて傷んでいます。

毎年,この場所では今の時期に水量が減って魚がとり残されているのですが,10年前には大半がブルーギルでした。ところが,ここ数年はブルーギルの姿をほとんど見ません。この水路の水は琵琶湖から流れてくるので,琵琶湖の生態系の変化を反映しているのです。

オオクチバス
オオクチバス[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]
オオクチバス
オオクチバス[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]
ニゴイ
ニゴイ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]
ニゴイ
ニゴイ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]
ニゴロブナ
ニゴロブナ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]
ニゴロブナ
ニゴロブナ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]

水底がえぐられて水が溜まっている場所に,ニゴイが2匹泳いでいました。

ニゴイ
ニゴイ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]

水路の様子

水路
水路[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]

コサギがいました。

アオサギ
アオサギ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]

イソヒヨドリもいました。

イソヒヨドリ
イソヒヨドリ[ in南禅寺下河原町 on2023/1/29 ]

2019年2月12日

道に沿って流れる,暗い水路の底に点々と魚が取り残されていました。
冬至から一月以上たっても,朝のランニングの時間はまだ暗いです。
少し明るくなるのを待って,写真を撮りました。

この水路は,疏水分線が水路閣から哲学の道へ向かう途中で分岐したものです。
碧雲荘の横を通り,まっすぐ南禅寺船溜まりまで伸びています。
冬の間,第1疏水が停水するので,この水路も水量が極端に減ります。
川底に魚がたくさん取り残されている年もあれば,ほとんど姿がない年も。
今年は,9匹が取り残されていました。
ニゴイが5匹,オオクチバスが3匹,ニゴロブナが1匹。

2010年には約50匹が取り残されていました。
あまりにたくさんいたので不気味で,記事にしています。(→2010年2月19日
オオクチバスが数匹,ニゴイが1匹,残りは全部ブルーギルでした。
これ以外の年も,取り残されている魚は大部分はブルーギルです。

しかし,不思議なことに,今年はブルーギルが1匹も混じっていません。
水路の水は琵琶湖疏水由来で,魚も琵琶湖から流されてきたもののはずです。
1980年代以降,琵琶湖ではブルーギルやオオクチバスなどの外来魚が大繁殖して問題になっています。
駆除作業なども毎年行われているはずですが。
遂にブルーギルの撲滅に成功したのでしょうか。

ネットで検索してみると,琵琶湖でもブルーギルが激減しているそうです。
京都新聞(2018年8月21日)

琵琶湖の外来魚「なぜか獲れない」 駆除量激減で困惑
 ブルーギルやブラックバスなど琵琶湖の外来魚の駆除量が本年度,激減している。漁業者がえりや刺し網を使って駆除した量は7月末現在で過去最低の34トンにとどまり,低調だった前年同時期の半分に満たない。県は「生息するはずなのになぜか捕獲できない。不思議な現象」と困惑しており,外来魚の生態把握や原因究明に乗り出す。
 県の推定では,外来魚の生息量は1150トン程度で横ばい状態だ。ただ駆除量は近年,右肩下がりが続く。生息量が多い南湖を中心に2002年度から本格的な駆除を始め,08年度までは年400トン以上を駆除したが,その後は徐々に減少。13年度以降は200トンを超すことが珍しい。
 特に本年度は1年で最も駆除量が多い5,6月が20トンとふるわず,4カ月間で年間目標量(250トン)の2割以下と低迷する。このうち生息量の8割を占めるとされるブルーギルの捕獲量は小型の1歳魚が9割に達し,大型の2歳魚以上は極めて少ない状況だ。
 捕獲されるブルーギルの小型化で駆除効率が低下し,駆除量に応じて経費の半額の補助を受けられる漁業者の操業日数が,前年同期の半分にとどまる「悪循環」に陥っている。今後も駆除量が急増することは考えにくく,県は目標量の見直しも検討する方針だ。
 県の担当者は「なぜ今まで取れていた場所で取れなくなったのか」と首をかしげており,本年度から季節ごとの分布状況の調査や新たな効率的な駆除手法の開発に取り組んでいる。

京都新聞(2018年12月18日)

琵琶湖のミステリー,過去10年で外来魚最少 ブルーギル寿命?
 滋賀県は17日,琵琶湖に生息する外来魚の2017年の推定生息量が722トンと,過去10年で最少になったと明らかにした。減少の理由ははっきりしないといい,詳しい調査を進めている。
 推定生息量の内訳はブルーギル519トン,オオクチバス202トン。いずれも同一基準で推計した07年以降,最少になった。
 県は減少の要因について,12年に大量繁殖したブルーギルが寿命を迎えていることや,16年の駆除が順調だったことなどが背景にあるとみている。
 漁業者による外来魚の駆除量も今年は激減しており,12月3日現在で67トンと,16年(164トン)の半分以下,07年の8分の1にとどまっている。ブルーギルの幼魚の割合が増えたことや,小型の魚が多いと捕獲効率が低下して漁業者が駆除作業に出る日数が減ったことなどが要因とみられている。
 ただ,今年は16年春に大量に生まれたブルーギルが成長し,駆除量が増える見込みだった。県は外来魚の生息場所が変化した可能性もあるとして,県漁業協同組合連合会と協力し実態調査を行っている。

駆除作業が効果を上げた喜びより,急に減って困惑している状況が伝わってきます。
原因がわからないので,不気味だということでしょうか。


2010年2月19日

野村碧雲荘南の小川。[写真6]
年に1回,水量が極端に減ります。
疎水のメンテナンスの関係でしょうか。

200m程にわたって,川底に点々と魚が取り残されていました。
口をパクパクしているものもいましたが,ほとんどは死んでいます。

約50匹の内の大部分はブルーギルでした。[写真3][写真4]
オオクチバスが数匹,ニゴイが1匹。[写真1][写真2][写真5]

水は疎水を通じて琵琶湖からきているので,魚相も琵琶湖の今を反映しているようです。
そういえば,この川で子供が遊んでいる姿を見たことがありません。
40~50年前の日本中に子供があふれていた時代には,きっとこの川でも子供たちが川遊びをしていたことと思います。
その時代のこの川にはどんな魚たちがいたのでしょうか。
アユ,ドジョウ,ウナギ,ナマズ,フナ,コイ・・・。
琵琶湖固有種の魚も多く流れてきていたと思われます。

池田清彦監修『外来生物事典』(2006年)には,琵琶湖の外来魚について次のように書いてありました。

 琵琶湖では1974年に初めてオオクチバスの生息が確認された。1980年代以降急速に増殖し,一方,琵琶湖の固有種で鮒鮨の材料となるニゴロブナや,アユ,ホンモロコなどの漁獲量が激減した。ニゴロブナは40年前にはおよそ500トンの漁獲量があったが,1989年には178トン,2003年には29トンと著しく減少している。
 琵琶湖の在来魚の減少については,水質悪化や環境の人工的な改変など,さまざまな要因が指摘されているが,ブラックバスやブルーギルなど外来魚による大量の捕食が最大の原因であるとされている。また環境の変化が,外来魚の生態に適合していたのではないかとの指摘もある。
 滋賀県水産課の試算によると,水温18℃の条件下で,オオクチバスは体重1kgを増やすために約10kgの魚や甲殻類を捕食する。また産卵期の重なるコイやフナが,他の魚類より減少傾向にあることから,餌をめぐって競合している可能性がある。
 1984年,滋賀県は漁業者に委託して外来魚の駆除に着手し,1985年度には450万円の予算を計上した。しかし琵琶湖の外来魚は年々増加の一途をたどり,2003年度の駆除費用は1億5500万円に達している。

 1960年代初頭に,琵琶湖周辺でブルーギルを真珠の養殖に利用する試みが行われた。淡水真珠母貝であるイケチョウガイの幼生の寄生相手として導入されたが,ラッドという別の魚に取って替られ,結果的にブルーギルはほとんど利用されなかった。現在,ブラックバスを駆逐する勢いで繁殖している。
 滋賀県では琵琶湖のブルーギルを「ビワコダイ」と名づけ,鮒鮨にならったなれ鮨などを試作し,食材としての活用を模索している。

「ビワコダイ」の名は,風味がタイに似ていることから付けられたそうですが,[写真4]をみると姿も何となく小鯛に似ている感じがしますね。
ちなみにブルーギルの「ギルgill」とは「えら」を意味し,えらぶたの後端から突き出している部分が濃紺色であることから名付けられたそうです。
写真を見た時には,ゴミがはさまっているとばかり思っていました