スミレの過去記事を一つにまとめました。


2024年2月20日

スミレの花が咲いていました。
少し前に,自転車で通りかかったときに見つけて,気になっていました。
こんな寒い時季に咲くかなと思いつつ,今回もう一度確認してみると,やはりスミレでした。
花と一緒に実もついています。
スミレは11月頃に返り咲きをすることがあるそうですが,2月に咲いているとは暖冬のせいでしょうか。

スミレ
スミレ[ in一切経谷町 on2024/2/16 ]

『日本の野生植物』(2016年)には,スミレについて次のように書いてありました。

高さ6-20cmの多年草。無茎種。地下茎は短く,太くて長い黄色みをおびた赤褐色の根がある。葉は斜上し、葉身は濃緑色で表面はやや厚く,鈍い光沢があり,三角状披針形ないし楕円状披針形,鈍頭,基部は切形または柄に細まり,長さ3-8cm,低い鋸歯があり,葉柄は長さ3-15cm,上方に翼があり,しばしば紅色をおびる。果期の葉は狭三角形で,基部のやや心形のものが多い。花期は3-6月。花は大型で径約2cm,濃紅紫色,花柄は長さ5-20cm。萼片は披針形,付属体は全縁。花弁は長さ12-17mm,側弁の基部は有毛。花柱は突出形(カマキリの頭形),上部が左右に張り出し,柱頭はごく短く突き出る。距は長さ5-7mm。

スミレ(花)
スミレ(花)
スミレ(葉)
スミレ(葉)
スミレ(柱頭・葯)
スミレ(柱頭・葯)

特徴は大体当てはまりますが,側弁基部に毛がありません。

側弁の基部が無毛のものをワカシュウスミレfmadia(Nakai)Hiyama

というそうです。

スミレ(側弁基部)
スミレ(側弁基部)

花弁の後方に突き出た袋状の部分(距)を切ってみると,面白い構造をしていました。
雄蕊から角のようなものが伸びています。雄蕊の距といい,蜜を出して唇弁の距に蜜を溜めるそうです。

スミレ(花・断面)
スミレ(花・断面)
スミレ(距・断面)
スミレ(距・断面)

果実を切ると中に種子がいっぱい詰まっていました。

スミレ(果実・断面)
スミレ(果実・断面)

スミレの花の色を表す「濃紫色」は何と読むのが正解なのでしょうか。いままで「のうししょく」と読んでいたのですが。濃紫は「のうし」ではなく「こむらさき」と読むのが正しいとか。それならば濃紫色は「こむらさきいろ」と読むのが正解かと思ったのですが,「のうししょく」という読み方もあるようで,混乱します。


2022年4月6日

歩道隅に咲いたスミレの花。

スミレ
スミレ

2022年3月20日

スミレが咲いていました。

スミレ
スミレ

2021年3月20日

(17)スミレの花が咲いていた。


2008年5月17日

スミレの実が割れ,種子が見えています。[写真1]

スミレの実は,種子が未熟なうちは下向きになっていますが,熟するにしたがい上向きとなります。
[写真4]は,花から実になりかけの頃。(2008年5月2日)
[写真3]は,裂開寸前。(2008年5月17日)

果実は割れると,3つの果皮片に分かれます。
果皮片は舟形をしていて堅く,なかに2,3列の種子が入っています。
ぎっしりと入った種子はつまむと簡単に抜けそうですが,果皮片のはさむ力は以外に強く,ピンセットで引っぱっても引き抜けません。

[写真3]の実をテーブルの上に放置して3時間後にみると,実が開き全ての種子がはじき飛ばされていました。
果実は乾燥により収縮し,種子を弾き飛ばすようです。
スミレの実が種子をはじき飛ばすメカニズムについて,中西弘樹著「種子(たね)はひろがる」(1994年)には次のように書いてありました。

種子が飛散するのはボート型の果皮片の両側が内側に湾曲し,その圧力で種子をはじき飛ばすからである。果皮片が湾曲するのは,果皮片が構造の異なった3層の細胞群からなり,これらの異なった乾燥化によって外側の層がより収縮をおこすためである。種子を強く押すために,果皮は種子が熟す頃にはかなり堅く,丈夫になっている。

スミレの種子には,エライオソームと呼ばれる,アリが好む物質がくっついています。[写真2}
エライオソームについて,同書には次のように書いてありました。

アリを誘引する物質を含んだ種子の付属体は,カルンクルcaruncle,種沈(しゅちん)あるいは種阜(しゅふ)とよばれ,珠皮(しゅひ)に由来し,種子が発生時に胎座(たいざ)に付着していたへそと呼ばれる部分にできる。一方,果実がアリに運ばれるものは,果皮あるいは花床に由来する付属体が果実にでき,同じようにアリを誘引する物質が含まれている。したがって,これらの付属体を総称してエライオソームelaiosomeとよんでいる。

エライオソームの成分の化学的分析は一部の植物で行われている。アリを誘引する主成分としてオレイン酸,リノール酸,パルミチン酸,ステアリン酸などいくつかの脂肪酸が知られており,その他水溶性成分としてグルタミン酸,アラニン,ロイシンなどのアミノ酸やフルクトース(果糖),グルコース(ブドウ糖),ショ糖(スクロース)などの糖が検出されている。

スミレ属の散布形式については,純粋アリ散布型,二重散布型(自動散布+アリ散布),自動散布型の3種類があるとされています。
スミレの散布形式は二重散布型となります。
種子は実からはじき飛ばされた後に,アリによってさらに運ばれます。

スミレの二重散布型について,同書には次のように書いてありました。

二重散布型は種子がはじき飛ばされた後,アリによって散布されるものをいう。このタイプのスミレは果梗が一般に長く。蒴果の位置は植物体から抜き出る。蒴果の壁は堅く,木質となっており,食害を防いでいる。種子が熟すと果実は上向き,三つの果皮片に分かれる。果皮片は堅く,舟型をしており,その中には2,3列の種子が入っている。果皮片のはさむ力は大きく,アリがそれを見つけても運び去ることはできない。やがて種子は次々に飛ばされ,その距離は2~5メートルに達する。種子は一般に小さく,光沢があり,小さいエライオソームが付着している。したがって,はじき飛ばされた後にアリに運ばれる。アオイスミレとエゾアオイスミレを除くすべての日本産のスミレは二重散布型であると考えられる。


2007年4月19日

スミレの花。「スミレ」はViola mandshurica(マンジュリカ)の種名であり,スミレ一般をあらわす名前でもあります。種名が普通の植物名と一緒という例は少なくて,例えば,タンポポの場合,タンポポという種名をもつものはなく,カンサイタンポポ,トウカイタンポポ,セイヨウタンポポなどが種名となります。サクラやウメ,バラなども種名としては存在しません。

「スミレ」という種名があることは,スミレ科を代表する種名があるということでシンプルでよいことのようですが,それはそれで不便なことでもあります。スミレといった場合,マンジュリカをさすのか,スミレ一般をさすのかわからないからです。
似た例としては,アゲハチョウがあります。アゲハチョウ科,アゲハチョウ属という科名,属名とともに,種名としてもアゲハチョウが存在します。種名としてのアゲハチョウは単にアゲハと呼ばれることが多く,紛らわしい場合はナミアゲハと呼ぶことが定着しています。
といって,マンジュリカを「並スミレ」とすることはスミレ属の代表にふさわしくありませんし,「本スミレ」とすれば他のスミレが偽者のようです。
園芸上では,種としてのスミレをさす場合は「マンジュリカ」とよんでいるそうです。

日本を代表するスミレのようですが,学名のマンジュリカ(mandshurica)は「満州の」という意味で,朝鮮,中国に広く分布しています。

「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」による,スミレの特徴は次のとおり。
・草丈…7~15cm
・葉…へら形で斜め上に展開する。
 花期の葉身は長さ5~8cmで,葉柄には,はっきりとした翼がある。
 毛の有無には変化が多く,無毛のものから全体が微毛におおわれるものまである。
 葉の表面は緑色,裏面は白っぽい緑色のものが普通だが,紫色を帯びるものもある。
・花…直径2cm前後で濃紫色。
 唇弁の中央部は白地に紫色のすじが入り,側弁の基部には毛がある。
 距はふつう細長いが,変化が多い。
 萼片の付属体には切れ込みはない。
・根…褐色(重要な特徴)


2004年4月22日

スミレスミレ
スミレ。スミレはスミレ科の総称であるとともに,種名でもあります。スミレ類の花の距には蜜があり虫が寄ってきますが,この花は実をむすびません。夏に,別の閉鎖花が出て自家受粉し,実を結びます。