オドリコソウの過去記事を一つにまとめました。


2024年4月20日

 道路脇の茂みの中に,オドリコソウの花が咲いていました。淡紅紫色の花が群生する様子は,踊子の名前を冠するだけあって華やかです。

オドリコソウ
オドリコソウ[ in厨子奥花鳥町 on2024/4/14 ]

『日本の野生植物』(2016年)には,オドリコソウについて次のように書いてありました。

 道ばたの半陰地や,やや湿った落葉広葉樹林の林床に群生する多年草。茎は群がって直立し,4稜があってやや太く,やわらかで,節には長い毛がある。葉は卵状三角形~広卵形,上部のものは卵形となり,先は鋭くとがるかまたはやや鈍く,長さ4-10cm,幅3-6cm,下面の脈上および上面にまばらに毛があり,縁には粗い不斉の鋸歯があり,基部は浅心形で1-6cmの葉柄がある。花期は3-6月。花は上部の葉腋に輪散花序をつくり,葉の基部には短柄がある。萼は長さ13-17mm,裂片の先は針状にとがる。花冠は汚白色~淡紅紫色,長さ2.5-3.5cm。花筒は基部で湾曲して立ち上がり,前面がふくらみ、上唇はやや平たいかぶと状で,縁に長い毛がある。下唇は反曲して,側裂片はごく短く先端は小さい突起状となり,中央裂片は大きく開出して2浅裂し,虫の止まる足場をつくり,基部に紫褐色の斑紋がある。分果はくさび状倒卵形で3稜があり,長さ約3mm。染色体数2n=18。南千島・北海道~九州,朝鮮半島・中国・ウスリーに分布する。和名は立ち上がった花の姿を笠をかぶった踊子の姿に見立てたものである。西日本の低地に産するものは全体大形で花が常に淡紅紫色だが,北日本の落葉樹林下に生えるものは花がやや小さく,汚白色となる傾向がある。

・茎は群がって直立し,4稜があってやや太く,やわらかで,節には長い毛がある。

オドリコソウ(茎・断面)
オドリコソウ(茎・断面)

・葉は卵状三角形~広卵形,上部のものは卵形となり,先は鋭くとがるかまたはやや鈍く,長さ4-10cm,幅3-6cm

オドリコソウ(葉)
オドリコソウ(葉)

・下面の脈上および上面にまばらに毛があり,縁には粗い不斉の鋸歯があり,基部は浅心形で1-6cmの葉柄がある。

オドリコソウ(葉)
オドリコソウ(葉)

・花期は3-6月。花は上部の葉腋に輪散花序をつくり,葉の基部には短柄がある。

オドリコソウ(花序)
オドリコソウ(花序)
オドリコソウ(蕾)
オドリコソウ(蕾)

・萼は長さ13-17mm,裂片の先は針状にとがる。

オドリコソウ(花・断面)
オドリコソウ(花・断面)

・花冠は汚白色~淡紅紫色,長さ2.5-3.5cm。

オドリコソウ(花序)
オドリコソウ(花序)

・花筒は基部で湾曲して立ち上がり,前面がふくらみ、上唇はやや平たいかぶと状で,縁に長い毛がある。

オドリコソウ(花・側面)
オドリコソウ(花・側面)

・下唇は反曲して,側裂片はごく短く先端は小さい突起状となり,中央裂片は大きく開出して2浅裂し,虫の止まる足場をつくり,基部に紫褐色の斑紋がある。

オドリコソウ(花)
オドリコソウ(花)

 雄蕊は4個で下の対が長く,花冠上唇の内側に沿って斜上し,葯室は水平に開出して開口部は直線的に互いに連結し,有毛です。

オドリコソウ(花・断面)
オドリコソウ(花・断面)

 柱頭は2裂しています。

オドリコソウ(柱頭,雄蕊)
オドリコソウ(柱頭,雄蕊)

2010年4月13日

オドリコソウの花が咲いています。

花笠をかぶって踊る人の姿に擬せられる花の形は,唇形(しんけい)といわれ,シソ科の花に共通する形です。
[写真5]はオドリコソウの花を縦に切った断面です。

みんな同じような花の形をしているシソ科の花のなかで,オドリコソウの花が特に踊り子を連想させるのは,花が姿勢よく立って咲く上に,上唇がほかの部位より大きいからだと思います。

大きく覆いかぶさった上唇から花笠をイメージすると,下唇は手をあげて踊る際に翻る着物の袖に見えてきます。
ぐるっと輪になって咲く様子は,やぐらの上に華やかに並ぶ踊り子でしょうか。

オドリコソウには赤花と白花があります。
写真[3]の上が赤花,下が白花です。
同じ場所に並んで咲いていました。
よく見ると,赤花は茎も赤いですね。
オドリコソウの名前にはやはり赤花のほうが似合うような気がしますね。

[写真4]は,オドリコソウとヒメオドリコソウの花を比較したものです。
ヒメオドリコソウは明治時代に日本に入ってきた外来植物です。
オドリコソウの花を小さくしたような花をつけるので,「姫」踊子草の名がつけられました。

植物の名前には,小さなものには「姫」,大きなものには「鬼」をつける習慣があります。
たまたま在来のオドリコソウより小さかったのでつけられた名前ですが,「姫踊子草」とは優雅な名前ですよね。
これが「鬼踊子草」だったら,どんな花だったでしょうか。

オドリコソウの花の形は,トラマルハナバチと特に相性が良いそうです。
北隆館『山里の山草ウォッチング』(1991年)には次のように書いてありました。

 オドリコソウは花笠をかぶり輪になって踊る娘を連想させる。花は,対になってつく葉の基部に,茎を背に8~12個が輪を作っている。花冠は長さ25mmほどで,花笠にあたる上唇は大きく,花の前方までせり出し,雄しべ雌しべの先端を覆っている。下唇は複雑に分裂している。トラマルハナバチの訪花の様子を見ると,ハチと花が腕を組んで踊るかのようにぴったりと組み合っている。まさに息の合ったパートナー同士という感がある。下唇の複雑な分裂は,パートナーであるトラマルハナバチの肢掛かりとして役立っていると見てよいだろう。
 このときトラマルハナバチは花冠の奥に口吻をのばして蜜を得,オドリコンウの葯と柱頭はハチの背に触れ花粉が授受される。下記の調査の結果,訪れた昆虫の55.6%までがトラマルハナバチであり,主要なパートナーであることを物語っていた。

「下記の調査」というのは,秋田県で実施された調査です。
京都でも,オドリコソウの主要なパートナーはトラマルハナバチなのでしょうか。
私がオドリコソウの花を見るのはいつも早朝なので,虫が吸蜜している姿は見たことがありません。

[写真6]は茎の断面です。
四角形をしていますね。
シソ科の植物の多くは四角形の茎をもっています。
力学的には,断面が丸い管と四角い管とでは,丸い管のほうが強いと習ったような気がするのですが,四角形の茎というのは強度的にどうなのでしょうか。

前記の本には,茎と根の形について次のように書いてありました。

 オドリコソウやホトケノザなど,シソ科のなかまは茎の断面が四角形をしている。4つの角の部分に硬い脈が通って茎になっているのである。多くの植物の場合,茎の断面は円形をしていて,茎が風などで曲げられたときに,あらゆる方向に対して同じ強さを持つようになっている。こうして考えると,四角形の断面をもつ茎の場合は,強い方向と弱い方向が存在して良くないように思われる。しかし,力学的に分析すると,実は正多角形の茎の場合もどの方向に曲げられても茎の強さは同じなのである。つまり,四角形の茎が存在しても良いことになる。さらに,カヤツリグサのように正三角形の茎が存在するのも不思議なことではないのだ。また,力学的には,角の部分に集中して硬い組織がある方が,曲げられたときに強いのである。
 このように茎の形としてはいろいろな形のものが存在するが,根の形ではどうだろうか。根は主に周りの水や土からの圧力を受ける。そのような場合,表面積が最も小さくなる円形が最も強い。こうして,根の断面は,ほとんどすべての植物が円形になっているのである。つまり四角形の断面をもった根は存在しないというわけなのだ。


2008年4月22日

オドリコソウの花が咲いていました。

シソ科の特徴である唇形(しんけい)の花は,一見しただけではどんな構造になっているのかよく分かりません。

[写真3]は花を縦に切ったところです。

シソ科の花の特徴について,「朝日百科 植物の世界」には次のように書いてありました。

シソ科の花は,5枚の花びらが筒状にくっついた合弁花冠(かかん)である。左右対称で,上下に裂けた唇形(しんけい)をしている。科の学名も「くちびる」を意味するラテン語の「ラベア(labea)」に基づいている。日本でも,シソ科をクチビルバナ科や唇形科といっていたことがある。ふつう,上唇(じょうしん)は2つの裂片,下唇(かしん)は3つの裂片からなる。下唇の中央裂片がとくに大きくなり,側裂片が小さい場合が多い。

雄しべは4本が花冠につき,しばしば2本が長く,まれに2本に退化する。雌しべは1本で2心皮性,子房上位で,それぞれ2室からなり,各室に1個の胚珠(はいしゅ)ができる。子房は縦に4裂し,中央の裂け目の下部に花柱(かちゅう)がつき,種子が熟すと,子房は4つに分裂し,それぞれが中に1個の種子を入れた分果になる。がくの中に4個の種子があるように見える。種子には胚乳がない。

筒状になった花のつけねには蜜が入っていて,切断すると流れ出しました。
大柄な花なので,蜜はかなりの量になります。

踊り子の傘に擬せられる上唇に隠れて,雄しべと雌しべがあります。
実際に上唇は傘の役目をしていて,花粉が雨で濡れるのを防いでいるそうです。

4本ある雄しべのうち2本はすこし短くなっています。
雌しべはどこにあるのかよく分かりませんが,よく見ると雄しべの葯の間に二股に割れた柱頭が見えます。[写真4]

茎は4角形です。[写真5]


2007年1月22日

オドリコソウ
オドリコソウの花が咲いていました。温暖なところでは一年中咲いているそうですが,このあたりでは例年3月上旬に咲き始めます。タンポポの開花と同じで暖冬の影響でしょうか。


2006年3月13日

オドリコソウの花
オドリコソウの花。ヒメオドリコソウはヨーロッパ原産の帰化植物ですが,このオドリコソウは在来種のようです。東南アジアの温帯に広く分布しています。
 陽を浴びて気持ちよく散歩していると,風にちらちらと白い灰が舞っています。どこかで落ち葉でも焼いているのかと思ったら,その白いものは灰ではなく雪でした。今日の最低気温は0.5度。最高気温も5.9度までしか上がりませんでした。


2005年3月23日

オドリコソウの花
オドリコソウの花。踊子草の名は,花を傘をかぶった踊子の姿に見立てたものですが,見ようによっては,カバが大きな口を開けているようにも見えます。筒状に花びらが一体化し,口を開けたように見える花を「唇形花」と呼びます。上の方を「上唇」,下の方を「下唇」と呼びます。唇形花はシソ科の特徴です。


2003年4月1日

オドリコソウの花
オドリコソウの花。花の形を,笠を被った踊子の姿に見立てて踊子草の名がつきました。茎の周りにきれいに並んで咲いているさまは,よく名づけたものだと思います。
茎を切ると,断面が四角形をしているのもおもしろいです。