ベランダの巣箱を下ろして,中を調べてみました。
ヤマガラが巣作りをしている時に,巣箱の中からコツコツという音が聞こえていて,何をしているのか気になっていたのです。(→2012年3月21日
夏の間はダニがいそうで,寒くなるのを待っていました。
来春に向けての,巣箱の清掃・消毒も兼ねています。

床板を削っているのではないかと想像していましたが,床板,側板にはつつかれた痕跡はなく,出入り口の穴のまわりにつついた痕がありました。
[写真4]の左側が使用前,右側が使用後の穴(内側から見たもの)。
出入り口を広げようとしていたようです。
穴の外側にもつつかれた痕がありましたが,結局穴は大きくなっていません。
穴の大きさを測ると,直径28mmでした。

毎年,この巣箱にはシジュウカラが巣作りしてきました。
今年,初めてヤマガラが,それも2つのペアが連続して巣作りしました。
1回目は,3月下旬に巣作りを始め産卵,5月上旬に巣立ちました。(→2012年3月21日2012年4月18日2012年5月4日,)
2回目は,1回目の巣立ち後2,3日してから別の番が巣作りを始め産卵,6月中旬に巣立ちました。(→2012年5月23日2012年6月13日

[写真1]は,巣箱から取り出したヤマガラの巣。
くぼんでいるはずの産座(さんざ)は,巣立ちを控えたヒナたちが踏み荒らして形をなくし,全体が平坦になっています。
土台の蘚苔類の厚みは6cmほどです。[写真2]
シジュウカラの巣と,材料,大きさともほとんど同じです。(→シジュウカラの巣

世界文化社『日本の野鳥 巣と卵図鑑』(1999年)には,ヤマガラの巣について次のように書いてありました。

巣の特徴:キツツキ類の古巣などを利用し,その中に多量の蘚苔類を主材として椀形の巣を作るが,底部には粗いコケを,上部には繊細なコケを使用する。産座にはスギ,ヒノキなどの樹皮を細かく裂いて綿状にしたものを敷きつめる。
大きさ:外径約15×13cm,厚さ約6cm,内径(産座)約6×6cm,深さ約4cm。
似た巣との見分け方:シジュウカラ,ヒガラが対象となるが,ヤマガラは産座の巣材に樹皮を綿状にかみ砕いたものを使用することで区別がつく。

産座は壊れているものの,表面には産座に使われた樹皮が残っていました。[写真3]

清棲幸保著『野鳥の事典』(1994年)には,ヤマガラの巣について次のように書いてあります。

林中の樹洞やキツツキの古巣穴,人家の間隙,人工の巣箱などの中に営巣する。巣の材料がヤマガラとまったく同じなシジュウカラが蘚類を多量に巣箱にはこびこんでまだ産座が完成しないうちに産卵をして卵を蘚の中にうめておくのに反し,ヤマガラは産座が完成してから産卵を始めるのが常である。 4月から7月ごろシジュウカラと同色の卵(18.9×14.4mm)を5~8個ぐらい産卵する。

シジュウカラは「蘚類を多量に巣箱にはこびこんでまだ産座が完成しないうちに産卵をして卵を蘚の中にうめておく」のに対し,ヤマガラは「産座が完成してから産卵を始める」とあります。
確かに,シジュウカラの卵は最初の3~4個までは蘚の中に埋もれていることが多いのに対し,ヤマガラの卵は最初の卵から産座の上にきちんと産み落とされています。
[写真5]は,産座上のヤマガラの卵。
[写真6]は,蘚に隠れているシジュウカラの卵。

巣作りの労力をはぶいてやろうと,親切心で巣をそのままに残しておくと,どういう訳かその巣箱は利用されません。(→2008年6月17日
巣を撤去するだけでなく,雛の病気を防ぐために巣箱の中はきれいに清掃して,日光にあてて消毒した方がよいようです。
以前,シジュウカラの雛8羽が,孵化後7日目に全滅したことがあります。(→2010年6月20日
全滅の原因が病原菌かどうかはわかりませんが,たくましそうに見える野生の生き物も,意外に弱い面があるようです。