2023年11月8日
ノギクが咲き誇る季節になりました。3か所に咲いているノギク。ノコンギクかヨメナか,見た目ではなかなか分かりません。
花をほぐしてみて,冠毛があるかどうかで判断します。冠毛があればノコンギク,なければヨメナです(正確には無いのでなく短い)。
2か所はノコンギク,1か所がヨメナでした。ノコンギクの葉はざらざらしていて,ヨメナの葉はつるつるしているといわれますが,個体差もあるのでそれだけで判断するのは難しいと思います。
2022年10月06日
ヨメナの花が咲いていました。
秋に咲く紺色のノギクといえばヨメナかノコンギクか,紛らわしいところです。
いまだに見ただけでは区別がつきません(毎年この場所に咲くのはヨメナです)。
葉っぱを触ってざらついていればノコンギク,滑らかならばヨメナと言われていますが,指でこすっても微妙なことが多いですね。
やはり花をほぐしてみて冠毛があればノコンギク,なければヨメナと判定するのが確実なようです。
花を切断したところ。
冠毛が目立ちません。
舌状花がほとんど散った花。
管状花から花柱が飛び出しています。
咲き始めの管状花。
合着して筒状になった雄しべから花粉があふれ出しています。
花粉を出し切った後の管状花。
花柱がのびて先が2つに割れています。
「葉は互生し,皮針形であらいきょ歯が目立ち,ざらつかず,質はやや薄い」
『牧野新日本植物図鑑』(1961年)には,ヨメナについて次のように書いてありました。
2482.よめな(はぎな 〔きく科〕
Aster Yomena Makino
(= Kalimeris Yomena Kitam.)
各地の耕作地帯の多少湿気がある所にふつうな多年草で,したがって田のへりなどに多く,地下茎をひいて繁殖する。茎は芽立ちでは赤味が強いが,のびると高さ30~100cm,緑色で多少紫色をおび,ほとんどざらつかない。葉は互生し,皮針形であらいきょ歯が目立ち,ざらつかず,質はやや薄い。下部の葉では3本の脈がやや認められる。秋に枝上部でやや鋭角に分枝する細い花茎の先に径2.5cmほどの紫色の頭花が1個着く。舌状花は紫色だが中心の管状花は黄色。そう果は長さ約2.5mmで冠毛は非常に短かい。春に若芽をつんで食用にする。細胞学的に雑種起源という。 (オオユウガギクの条下参照)九州南部から支那,インドにわたって分布するコヨメナ(A. indica L.)は冠毛がとくに短かく,そう果も長さ2mmほど,葉に短毛を散生し,茎は低い。 〔日本名〕嫁菜は若芽を,食用とするこの類中で最も美味でしかもやさしく美しいからであり,ムコナ(シラヤマギク)に対してついた名,古名のオハギナは一説に恐らく緒剥菜で若芽をつむ頃に古茎が立ちしかも皮が細くはげているからであろうという。ハギナはそれの略。 〔漢名〕?兒腸,馬蘭は狭義にとればコヨメナにあてた方がよい。
2018年12月5日
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[写真1]ヨメナ 頭花
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[写真2]ノコンギク 頭花
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[写真3]ヨメナ 総苞
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[写真4]ノコンギク 総苞
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[写真5]ヨメナ
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[写真6]ノコンギク
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[写真7]ヨメナ 頭花断面
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[写真8]ノコンギク 頭花断面
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[写真9]ヨメナ 筒状花
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[写真10]ノコンギク 筒状花
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[写真11]ノコンギク 舌状花
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[写真12]膜質の総苞(オオバナノセンダングサ)
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[写真13]ヨメナ 花後
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[写真14]ノコンギク 花後
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[写真15]ヨメナ 花後断面
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[写真16]ノコンギク 花後断面
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[写真17]ヨメナ そう果
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[写真18]ノコンギク そう果
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[写真19]ヨメナ 葉
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[写真20]ノコンギク 葉
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[写真21]ヨメナ 葉(表面)
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[写真22]ノコンギク 葉(表面)
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[写真23]ヨメナ 葉(裏面)
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[写真24]ノコンギク 葉(裏面)
最近,ヨメナと思っていた花がノコンギクだったことにと気づきました。
ヨメナとノコンギクの違いについては,以前に一度まとめたことがあるのですが(→2009年10月11日),もう一度確認のためにまとめてみます。
いがりまさし著『日本の野菊』(2007年)の検索表をもとに,検索しながら確認してゆきます。
① 総苞片の縁が「膜質」か「草質」か。
・膜質……キク属のグループ。
・草質……シオン属のグループ。
両種とも総苞片の縁は草質なので,シオン属のグループです。[写真3][写真4]
「総苞片の縁が膜質」とは[写真12](オオバナノセンダングサ)のように,総苞片の外周が薄い透明な膜のようになっているものをいいます。
②舌状花が「おおむね1列」に並んでいるか,それとも「明らかに2列以上」並んでいるか。
・おおむね1列……シオン属
・明らかに2列以上……ムカシヨモギ属
両種とも舌状花は「おおむね1列」に並んでいるので,シオン属です。[写真1][写真2]
③花が咲いた後,冠毛は「ほとんど伸びない」か「急速に伸びる」か。
・ほとんど伸びない……次へ
・急速に伸びる……ウラギク節
両種とも,花後に冠毛が急速に伸びることはありません。[写真13][写真14]
④総苞片は「卵形~楕円形で,瓦状に並ぶ」か「外片と内片の長さが等しく線形」か。
・卵形~楕円形で,瓦状に並ぶ……次へ
・外片と内片の長さが等しく線形……イソノギク節
両種とも総苞片は卵形で,瓦状に並んでいます。[写真3][写真4]
⑤そう果は「扁平」か「円筒形」か。
・扁平……次へ
・円筒形……シラヤマギク節
そう果とは,痩せた果実の意で,果肉がなく果皮と種皮が密着しています。
一見,種子に見えますが,その中に1個の種子を含む果実です。
両種とも,そう果は扁平です。[写真17][写真18]
⑥冠毛は「長さ1ミリ以上,そうでない場合は葉が三角状卵形」か「おおむね長さが1ミリ以下で,葉は披針形~卵形」か。
・長さ1ミリ以上,そうでない場合は葉が三角状卵形……シオン節
・おおむね長さが1ミリ以下で,葉は披針形~卵形……ヨメナ節
ヨメナは,冠毛が1ミリ以下で葉も披針形~卵形なので,ヨメナ節に該当。[写真9]
ノコンギクは冠毛の長さが1ミリ以上あるので,シオン節に該当。[写真10]
両種は同じシオン属ですが,冠毛の長さによって,ヨメナ節とシオン節に分かれます。
⑦ヨメナ節の検索
冠毛の長さにより,3つに分かれます。
・0.5ミリほどで,長さがそろっている……ヨメナ
・1ミリ前後だが,ばらつきが多い……オオユウガギク
・約0.25ミリとごく短い……次へ
[写真](目盛は1mm単位)を見ると,本種の冠毛は0.5㎜もありません。
本種はヨメナだとばかり思っていましたが,そうではないようです。
↓
・九州南部以南に生える……コヨメナ
・九州中部以北に生える……次へ
↓
・そう果の稜と面に腺毛がある…カントウヨメナ
・そう果の稜だけに腺毛がある…ユウガギク
本種のそう果には全面に腺毛があるので。カントウヨメナということになります。[写真17]
ヨメナと思って検索を進めてきたのですが,意外な結果になりました。
カントウヨメナは,名前のとおり関東地方を中心に分布しているヨメナの仲間です。
京都にはカントウヨメナは分布していないはずですが。
たまたまこの個体だけ,持ち込まれた種子から発生したのでしょうか。
同書にはヨメナの「実態は複雑だ。分類も多分に暫定的で,すっきりしているわけではない。」とあり,本種が(狭義の)ヨメナなのかカントウヨメナなのか,はっきり分かりません。
とりあえず(広義の)ヨメナとしておきます。
⑧シオン節の検索
シオン節は種類が多いので,ノコンギクまでたどり着いた道筋だけを記します。
頭花は直径1.5センチ以上
↓
総苞片は卵形,楕円形[写真4]
↓
舌状花は通常11個以上[写真2]
↓
茎に毛はあるが,顕著に粘ることはない
↓
総苞は粘らない
↓
総苞片の先はとがる[写真4]
↓
葉の基部は茎を抱かない[写真2]
↓
総苞は舌状花より短い[写真4]
↓
舌状花はふつう淡紫色。頭花は直径2~2.5センチ[写真2]
↓
葉は卵形~長披針形[写真20]
↓
ノコンギク
本種はノコンギクで間違いないようです。
ヨメナとノコンギクを見分けるポイントとしてよく挙げられるのは,冠毛の長さと葉の手触りです。
冠毛が長いものがノコンギクで,短いものがヨメナ。
ヨメナの葉はつるつるしているのに対して,ノコンギクの葉はざらざらしている。
葉の形はどちらも卵形~披針形で個体差もあるので,葉の形で両種を見分けることはできません。
しかし,葉の肌触りは確かに異なります。
拡大してみると,ノコンギクの葉には表にも裏にも小さな棘がたくさん生えていました。[写真22][写真24]
ヨメナの葉にも結構,棘が生えているのですが(特に裏面),弱々しい棘なのでざらつきとまでは感じられないようです。[写真21][写24]
2009年10月11日
[写真1]ノコンギク頭花
[写真2]ヨメナ頭花
[写真3]総苞片
左:ノコンギク 右:ヨメナ
[写真4]葉
左:ノコンギク 右:ヨメナ
[写真5]頭花断面
上:ノコンギク 下:ヨメナ
[写真6]冠毛(左:筒状花,右:舌状花)
上:ノコンギク 下:ヨメナ
[写真7]冠毛(左:舌状花,右:筒状花)
上:ノコンギク 下:ヨメナ
ノコンギクとヨメナの花はどちらも淡紫色をしていて,よく似ています。
いがりまさし著『日本の野菊』(2007年)によると,淡紫色をした野菊には基本となるものが3種あり,それらの違いは次のようになります。
ノコンギク | ヨメナ |
ヤマジノギク |
|
葉 | 卵形~長披針形。ざらつく | 卵形~長披針形。つるつるする | へら形~線形。ざらつく |
総苞片 | 卵形 | 卵形 | 線形 |
冠毛 | 長冠毛(筒状花,舌状花とも長い) | 短冠毛(筒状花,舌状花とも短い) | 異冠毛(筒状花のものは長く,舌状花では短い) |
生活型 | 多年草 | 多年草 | 基本的に2年草 |
分布 | 北海道~九州 | 本州,四国,九州 | 本州(静岡県以西),四国,九州 |
生育環境 | 耕地周辺から山地の林縁まで幅広い環境に生育する | 耕地周辺に多く,山地で見かけることはまずない。適湿な環境を好む |
山地の日当たりのよい草原や岩場。田んぼのあぜなどで見かけることはまずない。乾燥した環境を好む |
同定のポイント | この3種のなかで,もっとも広いエリアでふつうに見られる基本的な野菊。長冠毛であることを確かめればもっとも確実な同定法 | ノコンギクも同じような環境に生えていることが多く,遠目にはよく似ているが,葉を触って冠毛を確かめれば確実に同定できる | 線形の総苞片と異冠毛を確かめれば,ノコンギクやヨメナと間違えることはない。頭花はノコンギクやヨメナよりひとまわり大きい |
主な仲間 | シオン,シロヨメナ,センボンギク | オオユウガギク,コヨメナ,カントウヨメナ,ユウガギク | ハマベノギク,ヤナギノギク,ブゼンノギク |
ヤマジノギクはこの辺りでは見ないので,紛らわしいのはノコンギクとヨメナです。
それぞれ個体差が大きいので,色や形,大きさはあてになりません。
判別のポイントは,葉の手触りと,冠毛の長さにあるようです。
ノコンギクの葉はざらざらしているのに対し,ヨメナの葉はつるつるしています。
ヨメナは嫁菜とも書き,若葉を食用にするくらいなので,葉は優しい肌ざわりです。
冠毛の長さは,頭花をほぐして,ひとつひとつの花を見るとわかります。
ノコンギクは管状花,舌状花どちらにも,ふさふさの毛がついているのに対し,ヨメナには毛がありません。(正確には,ヨメナには冠毛がない訳ではなく,短いだけのようです)[写真6][写真7]
これも「野」と「嫁」を対比させると,「嫁」は毛深くないということでしょうか。
2005年10月8日
ヨメナの花が咲いています。キンモクセイの花もよい香りを漂わせています。ジョロウグモも太り,クルミも実を落とし,一歩一歩秋が深まっていきます。
2004年8月3日
紫色をしたキクの花が咲いていました。花を分解してみると冠毛が短いので,ヨメナだと思います。
2019年11月2日(
水路わきにヨメナが群生していた。
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[写真1]ヨメナ
2018年10月30日
ヨメナの花が咲いていた。
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[写真52]ヨメナ花
2016年10月7日
・花をほぐしてみると冠毛がないので,これはヨメナ。冠毛があればノコンギク。
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[写真12]10/7 ヨメナ
2003年10月20日
ヨメナとノコンギクとの見分け方について悩んでいます。両者は花も葉もよく似ていて,ユウガギクなどと合わせ野菊と総称されています。葉っぱの形は生育条件などによって個体差があるので,識別の基準にはならないような気がします。やはり,花びらの根元に冠毛があるかどうかで,判断するのが一番簡単なようです。写真はヨメナの花を縦に切った断面です。冠毛がありません。
2003年9月24日
ヨメナ。牧野新日本植物図鑑によると「嫁菜は若菜を,食用とするこの類中で最も美味でしかもやさしく美しいからであり,ムコナ(シラヤマギク)に対してついた名」とあります。