道にトゲナナフシが落ちていました。
持ち帰り,翌日見ると,前胸部と頭部の間から粘液のようなものが出ています。ナナフシの仲間には防御物質を分泌するものがあるそうですが,これがそうなのかどうかは分かりません。
翌日には固まって,体の凸凹と見分けがつかなくなっていました。
容器に入れたままにしていると,3日目に死んでいました。糞をたくさんしていたことからも,大量の餌を摂取しつづける必要があるようです。
捕まえたときから左後脚が変な方向に向いていたのですが,翌日には外れていました。
ナナフシ類は危機が迫ると,触覚や脚を自割します。転節と腿節との境界からポロリと外れ,また再生します。
しかし,通常の脚の跗節は5節ですが,再生した脚の跗節は4節しかありません。
外れた,左後脚の跗節。5節あります。
名前のとおり,体中に棘があります。棘のある植物に擬態しているようです。
前胸背板前縁に1対の長い突起があります。(ないものもいます)
東京農工大学のサイトに面白い記事が載っていました。ナナフシは鳥に食べられることによって子孫を拡散させているというのです。まるで植物の被食散布と同じことが,昆虫でも起きているとは。
硬い卵をもつナナフシの卵を,ヒヨドリに食べさせて,卵が無傷で排泄されるかどうかを検討しました.その結果,トゲナナフシ,ナナフシモドキ,トビナナフシのいずれについても,5~20%の卵が無傷で排泄されることがわかりました.さらに,このうちナナフシモドキでは,鳥の糞から回収した卵から実際にふ化が起こることも確認できました.
「ナナフシの卵は無傷のまま鳥の消化管を通過できる」という知見と,「ナナフシの成虫は,頻繫にヒヨドリに食べられている」ことや「ナナフシのメス成虫のお腹の中には,すでに硬くなった卵が沢山入っている」ことをあわせて考えると,「ナナフシが鳥に食べられた場合,植物の種子と同じように,ナナフシ体内の卵が消化されずに排泄され,それがふ化して分布拡大に寄与する」というのは,十分にありえるストーリーです .
積極的に鳥に捕食されている訳ではなくとも,ナナフシのように移動能力が極めて低い昆虫では,鳥による捕食が移動分散や分布拡大を促進する要因となりえるでしょう.
興味深いですね。似たような事例は他の生物でも起きているのかもしれません。