2023年9月14日

道にタマムシが死んでいました。腹端から生殖器らしき管が出たままになっていて,先端に白い塊が付いています。

タマムシ(♂)
タマムシ(♂)[ in夷谷町 on2023/9/5 ]
タマムシ(腹端)
タマムシ(腹端)

以前にも同じように管を出したまま死んでいるタマムシがいました。どちらも雄なので雄の生殖器だと思うのですが,なぜ生殖器を出したまま死んでいるのかわかりません。交尾中に死ぬとは思えないのですが。

タマムシ(♂:生殖器)
タマムシ(♂:生殖器)

死んでもタマムシは玉虫で,輝きを失いません。タマムシの体の色は色素によるものではなく,表面の微細な構造によって光が干渉・分光することで発色しているからです。
脚の一本一本から翅の裏,翅に隠れている腹部まで,くまなく構造色になっています。とまっている時も,翅を開いて飛んでいる時も,上から見ても下から見ても輝いて見えるようになっているのですね。

タマムシ(翅:表裏)
タマムシ(翅:表裏)
タマムシ(腹部:背面)
タマムシ(腹部:背面)
タマムシ(飛行姿勢)
タマムシ(飛行姿勢)
タマムシ(飛行姿勢を下から)
タマムシ(飛行姿勢を下から)

タマムシの雌雄の相違点について,北隆館『新訂原色昆虫大図鑑』(2007年)には,次のように書いてありました。

♂は前種(注:オガサワラタマムシ)と同様に複眼が突出し, 腹端が三角形に刳られ、 体下両側の軟毛は♀よりも顕著である。

♂は,
・複眼が突出
♀と並べて見ると,確かに胸部の幅が狭い分,複眼が出っ張ている感じはしますが,「複眼が突出」とまでは言えないように感じます。

タマムシ(♂♀頭部比較)
タマムシ(♂♀頭部比較)

・腹端が三角形に刳られ
雌雄を見分けるのにはこれが一番わかりやすい特徴です。♀の腹節末端が丸くなっているのに対し,♂の腹節末端はV字に凹んでいます。♂の腹板だけが凹んでいるのは,♂が♀の上に乗って交尾する時に都合がよいためではないかと思います。♂は♀の上に乗り生殖器を伸ばしますが,その際に腹板が丸いと腹板が邪魔になって曲げることができません。

タマムシ(♂:腹端)
タマムシ(♂:腹端)
タマムシ(♀:腹端)
タマムシ(♀:腹端)

・体下両側の軟毛は♀よりも顕著
♂♀ともに腹板には毛が生えていますが,それほど顕著な差はないように見えるのですが。

タマムシ(♂:腹板)
タマムシ(♂:腹板)
タマムシ(♀:腹板)
タマムシ(♀:腹板)
タマムシ(♂♀背面)
タマムシ(♂♀背面)
タマムシ(♂♀腹面)
タマムシ(♂♀腹面)

2023年7月29日

道にタマムシが死んでいました。全身を覆う金属光沢は,土埃を被っても目立ちます。すでに数匹のアリが寄って来ています。手に取って調べても,特に外傷は見当たりませんでした。

タマムシ
タマムシ[ in粟田口大日山町 on2023/7/26 ]
タマムシ
タマムシ[ in粟田口大日山町 on2023/7/26 ]
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ
タマムシ

腹節の末端は丸くなっているので雌だと分かります。雄は凹んで,V字に切れ込んでいます。

タマムシ(♀腹端)
タマムシ(♀腹端)
タマムシ(♂腹端)
タマムシ(♂腹端)

2022年7月26日

タマムシが死んでいました。誰かに踏みつけられたようです。胸部が潰れています。

タマムシ
タマムシ(at粟田口大日山町)
タマムシ
タマムシ(at粟田口大日山町)
タマムシ
タマムシ(at粟田口大日山町)

2021年9月16日

(1)~(2)弱っているタマムシを見ていると,中脚と後脚が縮こまって動かなくなっていた時に,前脚を動かしたためバランスを崩してゴロンと仰向けになりました。タマムシに限らず昆虫は死ぬと脚を折り曲げて縮まります。この状態ではバランスが悪くて,どうしても仰向けにならざるをえないようです。


2021年9月17日

昨日死んだタマムシのお尻から何か白いものがニョロニョロと出て固まっています。寄生虫でしょうか。確認のためにピンセットで引っ張ってみました。カマキリに寄生したハリガネムシのように,ずるずると出てくるのかと思ったらすぐに取れました。半透明の樹脂ぽい感じがします。雄性器から出てきたようですが,何なのかネットで調べてもわかりませんでした。


2021年9月24日

1週間前に死んだタマムシ。展肢していた針を外して写真を撮りました。体全体をメッキ液に浸したように,細かな部分までメタリックです。


2019年9月7日

道にタマムシが死んでいた。踏みつけられたのか,内臓が出ている。(九条山)


2019年8月29日

歩道にタマムシの死骸があった。体の表も裏も肢先も,すべて金属色。


2018年8月28日

道にタマムシが死んでいた。腹端から管が突き出ていたので♀の産卵管かと思ったが,腹端末節が「三角形に弯入」しているので♂だった。


2017年8月17日

タマムシが車にひかれていた。


2015年7月19日

家の前の道に,タマムシが歩いていました。[写真1]
飛び立たないうちにと,急いで捕まえました。
しかし,あわてなくてもよかったようです。
右上翅が半分,欠けています。[写真2]

上翅だけが欠けて,後翅が欠けていないということは,翅を広げて飛んでいる時に襲われたのでしょうか。
タマムシが金属光沢のある構造色をしているのは,鳥がキラキラとしたものを嫌うためと聞いたことがあるのですが,案外そうではないのかもしれません。
以前にも,腹部を鳥に食べられたらしいタマムシがいました。(→2012年8月1日

タマムシは,触角から肢の先まで,見事に構造色で覆われています。
通常は翅に隠れている,腹部の背面側も,翅の下は金属光沢があります。[写真5]
上翅の裏側も,一見黒っぽいのですが,光のあたり方で金属色に輝きます。[写真6]
唯一,構造色がないのは,後翅です。[写真7]
他の甲虫と同じような,半透明の褐色をしています。
後翅は,飛ぶために薄い膜状になっているので,金属光沢を有しないのでしょうか。
惜しいですね。
後翅がモルフォ蝶のような輝く翅をしていたら,それこそ完璧だったのですが。
(後翅を光にかざしてよく見ると,光のあたり具合によっては,一部金属光沢に輝く部分があります[写真8])

保育社『原色日本甲虫図鑑』(1986年)には,タマムシ科について,次のように書いてありました。

頭部の顔面は垂直,後頭は前胸中に深くはまりこむ。大あごなどの口器は小さく,背面からはほとんどみとめられない。触角は11節,まれに10節,第3または第4節から鋸歯状となるが,まれに先端4節のみの場合がある。前胸背板の基部は上翅の基部と密着し,間隙を残さない。腹部腹板は5節,第1および第2節はつねに癒合し不可動。,その会合線もときに消失する。両前基節窩は後方に開き,前胸腹板突起により隔てられ,相接することはない。

[写真9]~[写真11]は,タマムシの口器です。
見慣れた他の甲虫の大顎と異なり,太くて鋭さがないですね。
触角は11節です。[写真12]

タマムシについては,次のように書いてありました。

25~40mm。緑色部は方向により紫藍色となる。体下は金緑色,側方および腹端に向けて銅赤色を増し,腹端部は金銅赤色。まれに背面全体が鉄銹色を帯びる。 ♂は複眼が大きく,突出し,腹端が三角形にえぐられ, ♀は複眼の突出が弱く,腹端がまるい。 7~8月。エノキ,ケヤキ,サクラ,カシ類などの枯木につくが,モミ,カキなどについた記録もある。

この個体の体長は,38mm。[写真3]
「複眼の突出が弱く,腹端がまるい」ので♀です。
タマムシの雌雄について→2012年7月24日


2013年8月20日

タマムシ(ヤマトタマムシ)が道にひっくり返っていました。[写真1]
何かにぶつかったらしく頭から血を(といっても昆虫には赤い血は流れていないので,薄黄緑色をした体液ですが)流していました。
昨年も同じ場所でタマムシを拾っています。(→2012年7月24

タマムシ科には多くの種類があり,日本には約200種いるとされています。
この自然観察日記でも以前に,アオマダラタマムシ(→2012/8/15),ウバタマムアシ(→2009/8/25)をとりあげています。
種類は多くてもヤマトタマムシには似た種類はいないようで,同定に悩まなくて助かります。

タマムシは見事に体の隅から隅まで金属色ですよね。
アップにした写真を見ると,まるで職人が丁寧に仕上げた工芸品のようです。[写真2]
何のためにこんな金属色をしているのか気になるところです。
通常は翅の下に隠れている腹背板までも金属色をしている[写真8]ところをみると,金属色の効能は飛んでいる時にも必要となるもののようです。

タマムシは生殖相手を視覚で選んでいるようです。
朝倉書店『知られざる動物の世界13 甲虫のなかま』(2013年)には,次のように書いてありました。

オスはメスを視覚で認識する。オスたちは最も体が大きいメスを好む傾向がある(なぜなら,大きいメスのほうが,より多くの卵を産むことができるからだ)オーストラリアでは,このオスたちのメス識別法が不幸な結果を生んでいる。オーストラリアでは,あるメーカーによるビール瓶が道路わきによく捨てられている。タマムシの一種Julidomorpha bakewelliのオスは,ビンを見つけると,その光沢とでこぼこしたバンドから,ビンをたいへん大きなメスと勘違いする。そして,性的に興奮したオスは,ビンと交尾しようとして,無駄な時間を費やしてしまうのだ。その結果,オスたちは実際のメスと交尾をする機会を失う。また,アリによって捕食されるリスクも増大する。

“Julidomorpha bakewelli” がどんなタマムシなのかネットで探していたら,上記の現象を紹介するユーチューブの画像がありました。
ビール瓶に群がるオスを見ていると,ヤマトタマムシを捕まえるのにも,こんなトラップは使えないのかなと思ってしまいました。


2012年8月1日

道にタマムシがとまっていました。[写真1]
逃げるかなと思いながら,ゆっくりと手を伸ばしさっと抑え込むと,意外なほどあっさりと捕まえることができました。

しかし,手の中であばれるタマムシを見て,ぎょっとしました。
胴体がないのです。
捕まえるときにちぎれてしまったのかと,あわてて道の上を捜しましたが,見当たりません(見つけても,どうしようもないのですが)。
どうやら飛んでいる最中に,胴体部分を鳥に食いちぎられたようです。

タマムシ本人は胴体がなくなっていることに気づいていない風で,いたって元気です。
手のひらに乗せると,飛び立とうと翅を力強く振るわせます。
さすがにバランスがとれなくて,地上に落ちてしまいますが。
しかしバランスさえとれれば,胴体がなくても飛んでゆきそうな勢いです。

カブトムシなども,ばらばらになって道に落ちていても,頭部につながっている前胸の足だけが動いていたりします。
頭を噛みきられたカマキリが飛んで逃げたという話もあり,虫の神経系は動物とは違っているようです。

無脊椎動物脳プラットフォーム』というサイトに,昆虫の神経系についての解説が載っていました。

 昆虫のからだは頭部,胸部,腹部の3つに分かれる.頭部,胸部,腹部はそれぞれ頭部神経節と食道下神経節,胸部神経節,腹部神経節に支配される分散構造をとる.頭部神経節は特に脳といわれる.このような分散的な神経節構造は昆虫の神経系の大きな特徴である.

脳以外の神経節は,体性感覚の処理に加え,胸部神経節では飛翔,歩行などの基本的な運動パターンをつくる.したがって,頭部と腹部を切り離し,胸部だけの状態でも,羽ばたきや歩行を起こすことができる.ただし,直進の歩行や飛行のパターンに限られる.歩行や飛行の開始,終了,方向転換などの行動指令は脳から胸部神経節に伝達される.

これによると,昆虫は頭や腹がなくても,胸の部分さえあれば,飛んだり歩いたりすることができるようです。
胴体のないタマムシも,バランスさえとれれば飛ぶことはできたのですね。

朝7時ごろに捕まえて,昼過ぎになってもまだ元気でした。
夕方になるとさすがに動きが少なくなり,夜9時ごろにはほとんど動かなくなりました。
このタマムシは自分の胴体がなくなっていることに,いつ気づいたでしょうか。


2012年7月24日

道にタマムシが落ちていました。
飛んでいる最中に,不運にも車とぶつかったようです。
衝撃で,翅が曲がってしまっています。[写真1]
車に轢かれなかったのが不幸中の幸いだったようで,拾った時には動いていなかったのですが,しばらくすると動き出しました。

平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,タマムシについて次のように書いてありました。

タマムシChrysochroa fulgidissima は日本産の種の中ではもっとも大きく,体長は4cmに達する。別名ヤマトタマムシ。緑色の体は,背面に銅紫色の幅広い縦紋があり,美しい金属性の光沢がある。英名もtwo-striped green buprestid。本州(北部を除く),四国,九州のほか,朝鮮半島や台湾にも分布する。成虫は7~8月ころに多く出現し,日中は活発に飛ぶ。サクラ,モモ,エノキ,ケヤキ,カシ,カキなどの衰弱木や枯木の樹皮に産卵管を挿入して卵を産みつける。孵化した幼虫は材の中へ穿孔し,2~3年後の初夏のころ材の中で蛹化する。約2~3週間後に成虫となり,やがて穴をあけて脱出する。このような生態から樹木の害虫とみなされているが,健全な樹木に穿孔することはない。タマムシはその美しさで昔から親しまれてきた。また堅い翅は工芸にも適し,法隆寺の〈玉虫厨子>は有名である。

大きいものは「体長は4cmに達する」のですが,この個体は体長3.2cm。若干小ぶりです。
体の表も裏も肢も,見事に全身,金属色で覆われていますね。
写真で見ると,金属製の虫のようです。
以前拾ったものは,体の中身はアリに食べられててしまって空洞になっているものの,外側の殻は美しい金属色を保っていました。[写真6](→2003年8月11日

タマムシのなかまには,金属色をしていない種類もいます。
[写真2]の左側は,ウバタマムシです。
タマムシがキラキラと輝く金属色で鳥の目をくらませるという奇策をとったのに対して,ウバタマムシは樹皮に擬態するというオーソドックスな方法をとったようです。
その分,人の注目度は確実に減らすことができています。

ウバタマムシの雌雄は,腹部末端で見分けます。(→2009年8月25日
雄は腹部末端が「深くえぐられ」,雌は「まるい」。

タマムシはどうなのか調べてみると,同じ特徴があるようです。(『原色日本昆虫図鑑 甲虫編』(1955年))

♀は腹端末節が円く,♂は三角形に弯入する。

[写真3]の左側が今回の個体。
腹端末節が「三角形に弯入」しているので,雄です。
右側の雌は,「腹端末節が円く」なっています。

[写真5]は,腹端から産卵管のようなものが出ているタマムシ。(→2009年8月16日
3年前は産卵管が出ているのだから雌だろうと安易に判断したのですが,今回もう一度見直してみると,腹端末節が「三角形に弯入」しています。[写真5]
ということは,突き出ているのは産卵管ではなく,雄の生殖器だったようです。


2009年8月16日

道に落ちたタマムシにアリがたかっていました。[写真5]

死んで間もないようです。
肢とかも柔らかく,どこにも損傷がありません。

腹端から出ているのは,産卵管のようです。
近くで産卵した後,力つきたのでしょうか。

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これは♂でした。
腹端末節が「三角形に弯入」しています。
ということは産卵管ではなく,♂の生殖器でしょうか。→2012年7月24日

  • タマムシ
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  • タマムシ

2006年6月25日

タマムシ。 町内の道にとまっていたそうです。タマムシは毎年よく見るので,近くで繁殖しているのかもしれません。
タマムシ


2003年8月11日

タマムシの屍骸を拾いました。頭部が無くなり,胴体の中ががらんどうになっています。それでも羽や胴体は金属色に輝き,独特の美しさを失っていません。
昨年は10匹ほどのタマムシを捕まえたのですが,今年はまだ1匹も捕まえていません。
タマムシ


2004年6月14日

子どもが昨日に続き,今日もタマムシを捕まえてきました。タマムシは体の表も裏も,足も,触角もすべて金属色です。こんなにはでな色では,目立つのではないかと思いますが,このキラキラが逆に鳥に対して有効なのだそうです。鳥は虹色に輝くようなものは,本能的に避けるそうです。
タマムシ