スミレ類の過去記事を一つにまとめました。
2024年4月12日
アメリカスミレサイシン(ウィオラ・ソロリア)
道の隅に,濃い紫色をした花が咲いていました。直径2.5cmくらいある大型のスミレのなかまです。大きなハート形をした葉が目立ちます。高さは10cmほど,地上茎のないタイプです。
名前を調べているのですが,なかなか分かりません。
先ずは,ネットの「日本のスミレ検索システム」で検索してみました。
「・地上茎:なし ・花の色:青紫 ・側弁:有毛 ・葉形:ハート形 ・托葉の鋸歯:縁に毛が生える ・分布:近畿」で検索すると,イブキスミレが該当しました。
しかし図鑑で確認してみるとイブキスミレではありません。外見はよく似ているのですが,花柱の形が違います。イブキスミレの花柱は棒状で柱頭がカギ形に突き出ているのに対して,この個体は花柱上部がカマキリの頭形で柱頭がくちばし状に突き出ています。
その他にもスミレの検索表をいくつか試してみましたが,途中で訳が分からなくなり挫折しました。結局,同定には至らず,不明のままアップしようかと思っていたのですが,根元の根茎状のものを何と表現したらよいのか検索していたとき,アメリカスミレサイシン(ウィオラ・ソロリア)に行き当たりました。
これです!外来種だったのですね。散々迷ったあげく外来種だったという,いつものパターンです。しかも,ウィオラ・ソロリアについては,今までに3回も調べています。花の色が違うのでわかりませんでした。
→2009年4月18日
→2009年4月14日
→2007年4月9日
平凡社『日本の帰化植物』(2003年)には,アメリカスミレサイシンについて次のように書いてありました。
アメリカスミレサイシン (英名)Woolly blue vio-let, Dooryard, Sister violet
Viola sororia Willd.; V.papilionacea Pursh.
庭園や市街地の路傍に生える多年草。根茎はワサビ状に肥厚し,斜めまたは横に伸び,ときに分枝する。花茎や葉は無毛または有毛。托葉は狭披針形で,先は鋭く尖る。葉は卵形~腎形で,縁は波状の低い鋸歯があり,先は鋭形~鈍形,基部は深い心形。花期は4-6月。花茎は葉より高く,長さ5-12cm,先に径2-3cmの青紫色の1花を開く。側弁の基部付近に長さ1mmまたはそれ以上の扁平な毛が密にある。花弁は広卵形で先は円い。距は短く太く,長さ3mmくらい。閉鎖果は長卵形で萼より長い。
・根茎はワサビ状に肥厚し,斜めまたは横に伸び,ときに分枝する
・花茎や葉は無毛または有毛
・托葉は狭披針形で,先は鋭く尖る
・葉は卵形~腎形で,縁は波状の低い鋸歯があり,先は鋭形~鈍形,基部は深い心形
・花茎は葉より高く,長さ5-12cm
・先に径2-3cmの青紫色の1花を開く
・側弁の基部付近に長さ1mmまたはそれ以上の扁平な毛が密にある
・花弁は広卵形で先は円い
・距は短く太く,長さ3mmくらい
萼と付属体の様子
萼(裏面)
雄しべと雌しべ
2024年2月20日
スミレ
スミレの花が咲いていました。
少し前に,自転車で通りかかったときに見つけて,気になっていました。
こんな寒い時季に咲くかなと思いつつ,今回もう一度確認してみると,やはりスミレでした。
花と一緒に実もついています。
スミレは11月頃に返り咲きをすることがあるそうですが,2月に咲いているとは暖冬のせいでしょうか。
『日本の野生植物』(2016年)には,スミレについて次のように書いてありました。
高さ6-20cmの多年草。無茎種。地下茎は短く,太くて長い黄色みをおびた赤褐色の根がある。葉は斜上し、葉身は濃緑色で表面はやや厚く,鈍い光沢があり,三角状披針形ないし楕円状披針形,鈍頭,基部は切形または柄に細まり,長さ3-8cm,低い鋸歯があり,葉柄は長さ3-15cm,上方に翼があり,しばしば紅色をおびる。果期の葉は狭三角形で,基部のやや心形のものが多い。花期は3-6月。花は大型で径約2cm,濃紅紫色,花柄は長さ5-20cm。萼片は披針形,付属体は全縁。花弁は長さ12-17mm,側弁の基部は有毛。花柱は突出形(カマキリの頭形),上部が左右に張り出し,柱頭はごく短く突き出る。距は長さ5-7mm。
特徴は大体当てはまりますが,側弁基部に毛がありません。
側弁の基部が無毛のものをワカシュウスミレfmadia(Nakai)Hiyama
というそうです。
花弁の後方に突き出た袋状の部分(距)を切ってみると,面白い構造をしていました。
雄蕊から角のようなものが伸びています。雄蕊の距といい,蜜を出して唇弁の距に蜜を溜めるそうです。
果実を切ると中に種子がいっぱい詰まっていました。
スミレの花の色を表す「濃紫色」は何と読むのが正解なのでしょうか。いままで「のうししょく」と読んでいたのですが。濃紫は「のうし」ではなく「こむらさき」と読むのが正しいとか。それならば濃紫色は「こむらさきいろ」と読むのが正解かと思ったのですが,「のうししょく」という読み方もあるようで,混乱します。
2023年3月21日
ヒメスミレ
草抜きをしていると,小さなスミレの花が咲いていました。ヒメスミレです。濃い紫色の花はスミレに似ていますが,スミレよりは二回りほど小さく感じます。
根から抜き取ろうとしたのですが,太い根が地中深く入っているので抜けなくて,途中でちぎれてしまいました。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には,ヒメスミレについて次のように書いてありました。
1633. ひめすみれ 〔すみれ科〕
Viola minor Makino
本州から台湾にかけての人家近くのやや日当たりの良い場所を好む多年生の小草本で,無茎種であり,ふつう植物体には毛はない。根は白色で地中に深く入っている。葉は束生,葉身はほこ形の長卵形または長三角形で長さ2~4cm,基部は矢はず状の心臓形になるものが多く,深い緑色でやや光沢がある。葉柄は狭長で葉身より短い。4月に開花し,花柄は葉むらより高く伸び長さ10cmほど,中途に皮針形の包葉を2枚つける。花は濃紫でスミレに比べると大分小形で,横向きに咲き,径は10~12mmである。がく片は狭長でとがる。花弁は狭長で,側弁の内側には毛がはえ,唇弁の距は長さ3~4mm,ほとんど白色で紫の斑点が入っている。さく果は卵形で短かくとがり,断面はほぼ三角形,毛はなく,長さ7mmぐらいである。本種はスミレに近縁であるが,全体が小形,根は白色,花は小形,葉は矢はず状心臓形になるのでたやすく区別できる。全体に微毛が密生する品種をケヒメスミレという。九州や台湾に多い。〔日本名〕姫スミレ,スミレに似てより小形であることにちなむ。
・「葉は束生,葉身はほこ形の長卵形または長三角形で長さ2~4cm,基部は矢はず状の心臓形になるものが多く,深い緑色でやや光沢がある。葉柄は狭長で葉身より短い。」
・「花柄は葉むらより高く伸び長さ10cmほど,中途に皮針形の包葉を2枚つける。花は濃紫でスミレに比べると大分小形で,横向きに咲き,径は10~12mmである」
・「がく片は狭長でとがる。」
・「花弁は狭長で,側弁の内側には毛がはえ,唇弁の距は長さ3~4mm,ほとんど白色で紫の斑点が入っている。」
2022年4月6日
スミレ(ノジスミレ?)
歩道隅に咲いたスミレの花(ノジスミレ?)。
2022年4月11日
タチツボスミレ
タチツボスミレも色々なところで咲いています。
2022年4月7日
タチツボスミレ
タチツボスミレが至る所で一斉に開花しています。
2022年3月20日
スミレ(ノジスミレ?)
スミレ(ノジスミレ?)が咲いていました。
2021年3月20日
スミレ
(17)スミレの花が咲いていた。
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[写真17]スミレ
2010年4月11日
フモトスミレ
苔の間から顔を出した,小さなスミレの花。[写真1]
フモトスミレだと思います。
以前,ニョイスミレ(ツボスミレ)をフモトスミレと間違えたことがありましたが(→2004年4月20日),これはフモトスミレで間違いないようです。多分(^_^;)
どちらも白くて小さな花でよく似ていますが,ニョイスミレの距が白色なのに対し,フモトスミレの距や花柄は紫色を帯びています。
→ニョイスミレについて
いがりまさし著『日本のスミレ』(2004年)には,フモトスミレについて次のように書いてありました。
小さな白い花がかわいらしいスミレ。唇弁の距は紅紫色に染まり,暗緑色の葉の裏面には紫色が施されている。日本のスミレのなかで,地味ながらもハイセンスな逸品といえるだろう。名前は麓だが海岸近くの山地から2000メートル付近の高原まで見ることができる。照葉樹林の林縁,アカマツやコナラを主体とした二次林のした,また高原や日本毎側では落葉樹林や草原など,水はけのよい向陽地から半日陰にかけて多い。北は岩手県,南は屋久島まで知られている。全体に小型で,草丈は3~ 6センチ。葉はやや水平に広がり,長さ1~3センチの卵形だが,変化が多い。表面はふつう暗緑色で光沢はないが,濃緑色で光沢があるものもある。裏面は紫色を帯びる。花がないときはシハイスミレによく似ているが葉の表面の基部に開出する毛がまばらにあり,無毛のシハイスミレと見分けることができる。ただ,無毛のものや,全体に微毛が生えるものもあり,ひとすじ縄ではいかない。花は直径1センチ前後。唇弁には細かい紫色のすじがあり,側弁の基部には毛が密生する。ふつう上弁や側弁より唇弁が小さめで,上弁を反転させるようにして咲く。距は短い。各花弁に紫色のすじが入るもの,花弁の裏側が紅紫色になるものなど,花の色も変化が多い。花期はシハイスミレなどよりもやや遅め。花期 3月下旬~ 5月中旬
まとめると
全体:小型で,草丈は3~ 6センチ。→[写真1]
花:白くて小さい。直径1センチ前後。→[写真4]
唇弁:細かい紫色のすじがあり,側弁の基部には毛が密生する。→[写真4]
ふつう上弁や側弁より唇弁が小さめで,上弁を反転させるようにして咲く。→[写真3]
距:短い。唇弁の距や花柄は紫色を帯びる。→[写真2]
花住の上部:ふくらんでカマキリの頭形になる。→[写真5]
葉:表面はふつう暗緑色で光沢はないが,濃緑色で光沢があるものもある。
裏面は紫色を帯びる。
葉の表面の基部に開出する毛がまばらにある。→[写真6]
2009年4月22日
ニョイスミレ
土手の草地に,草々の間からニョイスミレが小さな花をのぞかせていました。
花の大きさは,タチツボスミレの半分ほどしかありません。
いがりまさし著『増補改訂 日本のスミレ』(2004年)によると,ニョイスミレの特徴は次のようになります。
・茎を斜め上にのばし,草丈は5~ 25センチ。
・花は白色で,直径1センチ前後と小さい。…[写真1][写真2]
・唇弁には緻密な紫色のすじがあり,側弁の基部には毛がある。…[写真3]
・距は短く,ぽってりしている。色は白色~淡緑色。…[写真4]
・花柱は上部がすこし左右にはりだす。…[写真3]
・葉は幅2~4センチの心形~腎形。…[写真5]
・葉はふつう無毛で,両面ともとも緑色だが,まばらに毛があるものや,裏面が紫色を帯びるものもある。…[写真5]
・托葉は全縁またはまばらな鋸歯がある。…[写真6]
ニョイスミレの別名はツボスミレといいますが,ツボスミレをニョイスミレに改名したのは牧野富太郎のようです。『牧野富太郎植物記1』(1973年)には,次のように書いてありました。
ツボスミレの「ツボ」ということばの意味については、むかしからいろいろいわれていますが、わたしは、「ツボ」とはむかしのことばでいう「庭」のことだと思っています。
広い意味では庭先から野辺へかけての地域を「ツボ」とよんだものと解釈されます。
ですから、ツボスミレの「ツボ」は「庭先」という意味だと解釈されます。ツボスミレはつまリニワスミレ、あるいはニワサキスミレという意味だと思われます。
ツボスミレは、はじめ庭さきにはえているスミレをそうよんだものでしょうが、野辺に咲いているスミレのこともツボスミレというようになったものだと思われます。
ふつうのスミレと、このツボスミレとは平安時代から別の種類として区別されていて、万葉集でもスミレとツボスミレの二つのよび名があらわれています。
「堀川院百首」というむかしの歌の本に出てくる歌には、「はこね山うす紫のツボスミレ ニしほ三しほ誰が染めけむ」「浅茅生の荒れたる宿のツボスミレ 誰が紫の色に染めけむ」というのがあります。この歌をみてもわかるように、ツボスミレはむらさき色の花をもち、染めものに用いたことがわかります。
ツボスミレの花は、むかしの歌にもよまれているようにむらさき色の花でなければなりません。ですから、今日、ふつうの図鑑に出ているツボスミレは、むかしのツボスミレではないことになります。
それではほんとうのツボスミレは、どんなスミレなのでしょうか。今日ひろくタチツボスミレとよばれているスミレこそ、むかしのツボスミレなのです。タチツボスミレにはむらさき色の花が咲き、むかしの歌に出てくるツボスミレとぴったりします。ですから、タチツボスミレというよび名はまったく不用で、これをむかしからのよび名であるツボスミレにもどすべきなのです。しかし、タチツボ
スミレという名がぶつう用いられているので、タチツボスミレでもよろしいが、むかしのツボスミレはこのタチツボスミレなのです。
ところが、やっかいなことには白い花をつけるツボスミレという名のスミレがほかにあるのです。このスミレはむらさき色ではなく小さな白い花をつけるスミレで、名は同じですがむかしのツボスミレではありません。そこで、わたしは、この小さな白い花をつけるスミレをニョイスミレ(如意スミレ)と命名し、混乱をふせぐことにしました。
ツボスミレというよび名は、むかしの人が着た衣のかさねの色目にもつかわれています。これはこの花の色素で衣を染めたからです。この衣のかさねの表はむらさきで、裏は青か、うす青だったようです。このことからもむかしの人がよんだツボスミレはむらさき色の花をもっていたもので、今日誤ってよばれている白花のツボスミレ(ニョイスミレ)ではないことは明らかです。
2009年4月18日
スノー・プリンセス
4年間わからなかった,白いスミレの花の正体がようやくわかりました。
→2005年4月24日
→2006年4月22日
北アメリカ原産のビオラ・ソロリアの園芸品種でスノー・プリンセスといい,各地で野生化しているそうです。
何年間も名前がわからなかったものが,結局は外来植物だったということが今までも何回かありました。
ツタバウンラン,マツバウンラン,ノハカタカラクサ,モンツキウマゴヤシ・・。
名前がわかったことはうれしいのですが,外来植物だったということには複雑な気持ちがします。
ビオラ・ソロリアは,根茎が太くなっているのでアメリカスミレサイシンとも呼ばれています。
[写真4]を見ると,根茎がわさびのように太くなっているのがわかります。
スミレサイシン類は発達した地下茎が特徴で,すりおろして食用にする地方もあるそうです。
ビオラ・ソロリアの根茎も同じようにして食べることができるのでしょうか。
試したくなるのですが,致命的な有毒植物というのは結構多いので,へたに試さない方が良いようです。
2009年4月14日
ビオラ・ソロリア(ウィオラ・ソロリア)
カーテンを開けると,久しぶりに雨が降っていました。
ジョギングをどうしようかと思ったのですが,歩くことにしました。
長靴をはいて,傘をさして。暖かい朝です。
岡崎の歩道わきに咲いていたスミレを見つけました。
ウイオラ・ソロリア?
以前,若王子神社の境内でも咲いていた外来種です。(→2007年04月09日)
その時調べた「山渓ハンディ図鑑6 増補改訂 日本のスミレ」(2004年)では,ウイオラ・ソロリアとなっていました。
ウイオラ・ソロリアは学名「Viola sororia」の日本語読みです。
その時は何とも思わずにそのまま「ウイオラ・ソロリア」と記してしまいましたが,何か変です。
どうして「ヴィオラ」ではなくて「ウイオラ」なのでしょう。
索引にも「ウイオラ」で載っています。誤植でしょうか。
「ウイオラ・ソロリア」とGoogle検索すると,6件だけしかヒットしません。(そのうち2件は「九条山自然観察日記」)
珍しい花でもないようなので,試しに「ビオラ・ソロリア」でGoogle検索すると,8,150件もヒットしました。
ビオラ・ソロリアが一般的な呼び名のようですね。
園芸用としてかなり人気の品種らしく,通信販売サイトもたくさんあります。
どのサイトを見ても,「丈夫」「すごい繁殖力」の語句が踊っています。
これではすぐに花壇から逃げ出して雑草化してしまいます。
そのうちに,いたるところで見られる,ありふれた花になるのかもしれません。
外来植物が定着すると,環境に何らかの影響がでるのは避けられません。
やはり一番影響を受けるのは在来種のスミレなのでしょうか。
花が紫色のものをパピリオナケア,中心が紫色で白花のものをプリケアナといいます。
白一色のスノー・プリンセスという園芸種もあるそうです。
前書には,Viola sororiaについて次のように書いてありました。
近年よく見るようになった外来種。性質が強く,よく花をつけるため,急速に広まった。北アメリカの原産で,根茎がスミレサイシンのように太くなるので,アメリカスミレサイシンとも呼ばれる。
英名はCommon Blue Violet。原産地ではふつうに見られるスミレのようだ。かつては,花が紫色のものをパピリオナケアと呼び,中心が紫色の白花のものはプリケアナと呼ばれていたが,近年の研究では,両者ともV.sororiaに含まれるとされる。
<2009/4/17追記>
「朝日百科 植物の世界」(1997年)では,スミレ属の名を「ウィオラ」で統一してありました。
属名ウィオラについて次のような解説が載っていました。
属名の「ウィオラ」はラテン語で,ギリシャ語の「イオン(ion)」に由来する。ギリシャ神話によると,天帝ゼウスは雌牛に変えられた女神官イオのために,彼女の食べ物として牧場一面にスミレの花を咲かせたという。属名はこの女神官の名が転じたものとの説もある。スミレにまつわる伝説がほかにも世界中に残されており,枚挙にいとまがない。
「ウィオラ・ソロリア」でGoogle検索すると2,400件ヒット。
「ウイオラ」ではなく「ウィオラ」と,小さなイにしなればならなかったのですね。
2008年5月17日
スミレ
スミレの実が割れ,種子が見えています。[写真1]
スミレの実は,種子が未熟なうちは下向きになっていますが,熟するにしたがい上向きとなります。
[写真4]は,花から実になりかけの頃。(2008年5月2日)
[写真3]は,裂開寸前。(2008年5月17日)
果実は割れると,3つの果皮片に分かれます。
果皮片は舟形をしていて堅く,なかに2,3列の種子が入っています。
ぎっしりと入った種子はつまむと簡単に抜けそうですが,果皮片のはさむ力は以外に強く,ピンセットで引っぱっても引き抜けません。
[写真3]の実をテーブルの上に放置して3時間後にみると,実が開き全ての種子がはじき飛ばされていました。
果実は乾燥により収縮し,種子を弾き飛ばすようです。
スミレの実が種子をはじき飛ばすメカニズムについて,中西弘樹著「種子(たね)はひろがる」(1994年)には次のように書いてありました。
種子が飛散するのはボート型の果皮片の両側が内側に湾曲し,その圧力で種子をはじき飛ばすからである。果皮片が湾曲するのは,果皮片が構造の異なった3層の細胞群からなり,これらの異なった乾燥化によって外側の層がより収縮をおこすためである。種子を強く押すために,果皮は種子が熟す頃にはかなり堅く,丈夫になっている。
スミレの種子には,エライオソームと呼ばれる,アリが好む物質がくっついています。[写真2}
エライオソームについて,同書には次のように書いてありました。
アリを誘引する物質を含んだ種子の付属体は,カルンクルcaruncle,種沈(しゅちん)あるいは種阜(しゅふ)とよばれ,珠皮(しゅひ)に由来し,種子が発生時に胎座(たいざ)に付着していたへそと呼ばれる部分にできる。一方,果実がアリに運ばれるものは,果皮あるいは花床に由来する付属体が果実にでき,同じようにアリを誘引する物質が含まれている。したがって,これらの付属体を総称してエライオソームelaiosomeとよんでいる。
エライオソームの成分の化学的分析は一部の植物で行われている。アリを誘引する主成分としてオレイン酸,リノール酸,パルミチン酸,ステアリン酸などいくつかの脂肪酸が知られており,その他水溶性成分としてグルタミン酸,アラニン,ロイシンなどのアミノ酸やフルクトース(果糖),グルコース(ブドウ糖),ショ糖(スクロース)などの糖が検出されている。
スミレ属の散布形式については,純粋アリ散布型,二重散布型(自動散布+アリ散布),自動散布型の3種類があるとされています。
スミレの散布形式は二重散布型となります。
種子は実からはじき飛ばされた後に,アリによってさらに運ばれます。
スミレの二重散布型について,同書には次のように書いてありました。
二重散布型は種子がはじき飛ばされた後,アリによって散布されるものをいう。このタイプのスミレは果梗が一般に長く。蒴果の位置は植物体から抜き出る。蒴果の壁は堅く,木質となっており,食害を防いでいる。種子が熟すと果実は上向き,三つの果皮片に分かれる。果皮片は堅く,舟型をしており,その中には2,3列の種子が入っている。果皮片のはさむ力は大きく,アリがそれを見つけても運び去ることはできない。やがて種子は次々に飛ばされ,その距離は2~5メートルに達する。種子は一般に小さく,光沢があり,小さいエライオソームが付着している。したがって,はじき飛ばされた後にアリに運ばれる。アオイスミレとエゾアオイスミレを除くすべての日本産のスミレは二重散布型であると考えられる。
2008年4月8日
ヒメスミレ
石垣の間から,ヒメスミレの花が顔を出していました。
ヒメスミレは全体にスミレを小さくした様な花です。
スミレに似て小形であることから姫スミレの名がついています。
今まで単に小さなスミレと思ったいたものも,ヒメスミレの名を知ってから見ると,スミレとは違う種類なのだということがよくわかります。
スミレとの違いは
・スミレより小形。花の直径は,スミレが2cm前後なのに対し,ヒメスミレは1~1.5cm。ヒメスミレの花を見てからスミレの花を見ると,スミレの花がずいぶん大ぶりに見えます。
・スミレの葉がへら形なのに対し,ヒメスミレは三角状披針形。スミレの葉の方が細長い形をしています。
・スミレの葉柄に翼があるのに対し,ヒメスミレの葉柄には翼がほとんどありません。
・スミレの葉の裏面は白っぽい緑色なのに対し,ヒメスミレの葉裏は紫色をおびるものが多い。(スミレにも紫色を帯びるものがあるそうです)
・スミレの根が褐色なのに対し,ヒメスミレの根は白色。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には,ヒメスミレについて次のように書いてありました。
本州から台湾にかけての人家近くのやや日当たりの良い場所を好む多年生の小草本で,無茎種であり,ふつう植物体には毛はない。根は白色で地中に深く入っている。葉は束生,葉身はほこ形の長卵形または長三角形で長さ2~4cm,基部は矢はず状の心臓形になるものが多く,深い緑色でやや光沢がある。葉柄は狭長で葉身より短い。4月に開花し,花柄は葉むらより高く伸び長さ10cmほど,中途に皮針形の包葉を2枚つける。花は濃紫でスミレに比べると大分小形で,横向きに咲き,径は10~12mmである。がく片は狭長でとがる。花弁は狭長で,側弁の内側には毛がはえ,唇弁の距は長さ3~4mm,ほとんど白色で紫の斑点が入っている。さく果は卵形で短かくとがり,断面はほぼ三角形,毛はなく,長さ7mmぐらいである。本種はスミレに近縁であるが,全体が小形,根は白色,花は小形,葉は矢はず状心臓形になるのでたやすく区別できる。
2007年5月1日
ニョイスミレ
ニョイスミレ。白い小さな花を咲かせています。反りかえった上弁がナースの帽子を思わせます。
もともと「ツボスミレ」と呼ばれていたものを牧野博士が改名したようです。
「牧野新植物図鑑」に次のように書いてありました。
『ツボスミレは今までこの種に使われた名だがもともと庭にはえるスミレの総称であったし,またツボを陶器の壺と解釈し,花形が壺に似ているためとするのはよくない。如意スミレは漢名に由来し,ツボスミレの名が不純でまぎらわしいので筆者が命名しなおしたものである。如意とは僧侶が持つ仏具の一つでその形と本種の葉形との類似から来ている。』
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」による,ニョイスミレの特徴。
・生息環境…田のあぜなどの向陽地から沢沿いの林のなかまで,すこし湿り気さえあれば,いたるところで見られる。
・草丈…5~25cm
・花…白色で直径1cm前後と小さい。
唇弁には緻密な紫色のすじがあり,側弁には短毛が密生する。
距は白色~淡緑色。短くぽってりとしている。
花柱は上部がすこし左右にはりだす。
・葉…幅2~4cmの心形~腎形。
ふつう無毛で,両面とも緑色だが,まばらに毛があるものや,裏面が紫色を帯びるものもある。
・托葉…全縁またはまばらな鋸歯がある。
・花期…4~6月
・分布…南西諸島を除くほぼ全国
2007年4月30日
アリアケスミレの花
アリアケスミレの花。「アリアケ」の名は,花の色が白色から淡紫色まで変化に富んでいるため,有明の空の色になぞらえてつけられたものだそうです。
「有明」は秋の季語です。
講談社「日本大歳時記」によると
『有明は,夜明け,明け方であって,その時分のほの明りの中に残っている月痕(げっこん)である。名月から何日も経っている月というのではなく,月もだんだん出が遅くなって翌朝の有明空に望むことのできる月である。』
でも,夜が明けるにつれ,モノトーンの世界がしだいに色づいてゆくのは,どんな夜明けにもおこることですよね。アリアケスミレの白い花を,夜明けの空に残る有明月になぞらえたのでしょうか?
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」には「アリアケスミレ(V.betonicifolia var.albescens)」として載っていますが,「牧野新日本植物図鑑」にはシロスミレの項に追記するかたちで載っていました。
(本屋さんで新訂版を確認してみたら,アリアケスミレとして独立した項目で載っていました。)
「牧野新日本植物図鑑」シロスミレの項
『次に本種に似て花はやや小さく,花弁の色は白からほとんど紫の近くまで変化し,紫のすじが多く,側弁,さらに著しいものでは上弁の内側にまで突起毛のあるものがわが国の低湿地によく見られるが,これをアリアケスミレ(V.oblongo-sagittata Nakai var.albescens Hashimoto) という。花の差だけでなく,高さは7cm内外,葉も数多く,葉柄は葉身と同長またはしばしば半分の長さになり,葉身は長三角形状卵形で基部は切形,両面とも光沢があり,花期には毛がない。根も白色である。日本のほか朝鮮,支那北部にあり,種としてはアジア南部に広く分布している。これはシロスミレと次種スミレとの雑種起源といわれている。』
2007年4月19日
スミレ
スミレの花。「スミレ」はViola mandshurica(マンジュリカ)の種名であり,スミレ一般をあらわす名前でもあります。種名が普通の植物名と一緒という例は少なくて,例えば,タンポポの場合,タンポポという種名をもつものはなく,カンサイタンポポ,トウカイタンポポ,セイヨウタンポポなどが種名となります。サクラやウメ,バラなども種名としては存在しません。
「スミレ」という種名があることは,スミレ科を代表する種名があるということでシンプルでよいことのようですが,それはそれで不便なことでもあります。スミレといった場合,マンジュリカをさすのか,スミレ一般をさすのかわからないからです。
似た例としては,アゲハチョウがあります。アゲハチョウ科,アゲハチョウ属という科名,属名とともに,種名としてもアゲハチョウが存在します。種名としてのアゲハチョウは単にアゲハと呼ばれることが多く,紛らわしい場合はナミアゲハと呼ぶことが定着しています。
といって,マンジュリカを「並スミレ」とすることはスミレ属の代表にふさわしくありませんし,「本スミレ」とすれば他のスミレが偽者のようです。
園芸上では,種としてのスミレをさす場合は「マンジュリカ」とよんでいるそうです。
日本を代表するスミレのようですが,学名のマンジュリカ(mandshurica)は「満州の」という意味で,朝鮮,中国に広く分布しています。
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」による,スミレの特徴は次のとおり。
・草丈…7~15cm
・葉…へら形で斜め上に展開する。
花期の葉身は長さ5~8cmで,葉柄には,はっきりとした翼がある。
毛の有無には変化が多く,無毛のものから全体が微毛におおわれるものまである。
葉の表面は緑色,裏面は白っぽい緑色のものが普通だが,紫色を帯びるものもある。
・花…直径2cm前後で濃紫色。
唇弁の中央部は白地に紫色のすじが入り,側弁の基部には毛がある。
距はふつう細長いが,変化が多い。
萼片の付属体には切れ込みはない。
・根…褐色(重要な特徴)
2007年4月18日
姫スミレ
ヒメスミレの花。濃紫色の花がスミレによく似ていて,スミレよりは小形なので姫スミレの名があります。スミレより小さいという意味で名づけられたものには,もう一つ「コスミレ」がありますが,コスミレが名前の割りにスミレより小形ではないのに対し,「ヒメスミレ」はかなり小形です。
日当たりのよい石垣や,道路わきによく生えています。今まで小さなスミレと思っていましたが,別の種類だったのですね。
「朝日百科 植物の世界 6」に次のように書いてありました。
『放浪生活をするヒメスミレV.confusa ssp.minorはアスファルトや敷石の間隙,植木鉢などに入り込んで生え,定住地はない。花や葉はスミレに比べてずっと小さく,葉は三角状披針形である。花後に大きくなった夏葉はスミレと紛らわしくなるが,葉柄上部の翼はスミレのように広くならない。』
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」による,ヒメスミレの特徴は次のとおり。
・草丈…3~8cm
・葉…長さ2~4cm 。三角状披針形。
花のあとはやや基部がはりだす。
表面は暗緑色。裏面は紫色を帯びるものが多い。
スミレと違って,葉柄の翼はほとんどない。
・花…直径1~1.5cm。花弁は細身のものが多く,側弁の基部は有毛。
2007年4月10日
小さくないけどコスミレ
コスミレ。小さいスミレの意味でコスミレの名がついていますが,スミレの花と比較するとむしろコスミレの方が大きな花をしています。
一見タチツボスミレの花に似ていますが,葉の形が違うので割と容易に見分けられます。
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」を見ていると,アカネスミレの花にもよく似ています。次の点でコスミレと同定しました。
・花の内部が見えている。(アカネスミレは花弁の基部が閉じ気味に咲くので,花の内部が見えにくい)
・葉の裏が紫色を帯びている。(コスミレは葉の裏が紫色を帯びることが多い)
・距が太くてぼってりしている。(アカネスミレの距は先が細長くなっている)
・花柱の先の形。
・子房に毛が生えていない。(アカネスミレは子房に白い毛が生えている)
・コスミレは北海道から九州までの低地に分布しているのに対し,アカネスミレは西日本の低地には少ない。
2007年4月9日
ウイオラ・ソロリア
若王寺神社の境内に咲いていたスミレの仲間。図鑑で調べると,外来種のウイオラ・ソロリア(プリケアナ)でした。若王寺神社は,哲学の道から少し入ったところにあり観光客も多いので,人に付着して種が持ち込まれたのでしょうか。近年はこのスミレを山の中で見かけることもあるそうです。スミレには鳥がついばむような実はならないので,どうやって色々なところに種が蒔かれるのことになったのか興味深いですね。
「山渓ハンディ図鑑6 日本のスミレ」に,ウイオラ・ソロリアについて次のように書いてありました。
『近年よく見るようになった外来種。性質が強く,よく花をつけるため,急速に広まった。北アメリカの原産で,根茎がスミレサイシンのように太くなるので,アメリカスミレサイシンとも呼ばれる。
英名はCommon Blue Violet。原産地ではふつうに見られるスミレのようだ。かつては,花が紫色のものをパピリオナケアと呼び,中心が紫色の白花のものはプリケアナと呼ばれていたが,近年の研究では,両者ともV.sororiaに含まれるとされる。』
2007年3月28日
距のないスミレ
距のないスミレ。石垣に生えていたスミレの仲間ですが,距がありません。
距(きょ)とは,花びらや萼が変化して後に突き出しているものをいいます。 スミレの距は花びらの1枚が袋状になってうしろに突き出しています。距のなかには蜜が入っていて,虫はこの蜜に誘われてやってきます。虫が長い距の奥まで頭を突っ込むことにより,虫の体には花粉が降りかかることになります。
こうした虫媒花としての巧妙な仕組みを備えているにもかかわらず,スミレの花が結実することはほとんどないそうです。スミレの種は,閉鎖花という開かない花のなかで自家受粉することによって,作られます。
スミレの語源には,墨入れ説,相撲取り草説などいくつかありますが,いずれも距のある独特の形に由来しています。
この距のないスミレ,名前を調べたのですが分かりませんでした。
2007年3月12日
タチツボスミレ
タチツボスミレの花。今年はじめて見るスミレの花です。この辺りでは,大体今の時期に咲き始めるようです。今までの日記を見てみると2006年3月19日,2005年3月16日,2004年3月17日にタチツボスミレのことを書いていました。
朝,外に出ると,はげしく雪が降っていて驚きました。暖冬といわれていたのに,今の時期に雪とは。しばらくするとやみ,晴れてきました。
2006年4月22日
真っ白なスミレ
真っ白なスミレ。名前が分かりません。特徴としてはシコクスミレに似ているのですが。花の大きさ2センチほど。昨年も調べたものの名前が分からなかったようで,4月24日の日記に,このスミレのことを書いていました。
(2009/4/14 名前がわかりました。園芸種のビオラ・ソロリア‘スノー・プリンセス’)
2006年4月18日
アリアケスミレ
アリアケスミレ。葉も細長く,白いスミレといった感じです。花の色が変化に富んでいるので,有明の空になぞらえて,アリアケスミレの名が付いています。シロスミレという種類もありますが,シロスミレは北海道など寒い地方に生えるので,京都に生えていることはないようです。
2006年4月12日
タチツボスミレ
タチツボスミレ。
2006年3月27日
コスミレ
コスミレ。 日溜りにかたまって咲いていました。
今日,京都気象台がサクラ(ソメイヨシノ)の開花を宣言しました。新しい標本木に代わって,はじめての宣言です。平年より4日,昨年より6日早いそうです
2006年3月19日
タチツボスミレの花が咲いていました
タチツボスミレの花が咲いていました。タチツボスミレは,数多いスミレの種類のなかでも,一番普通に見かけるものです。
2005年4月24日
白いスミレの花
白いスミレの花。名前を調べているのですが,はっきりしません。葉の形:ハート型,距:ごく短い,側弁の内側:有毛,柱頭:ひさし状にはり出す。で,ニョイスミレかなと思うのですが,唇弁に模様がなく純白なのでニョイスミレではないような気がします。 花の大きさも2センチほどあり,1センチ前後のニョイスミレより大きいです。
2005年3月16日
今年初めてスミレの花を見ました
今年初めてスミレの花を見ました。タチツボスミレです。
2004年4月30日
タチツボスミレの実
タチツボスミレの実。スミレの開放花は実を結ばないものだと思っていましたが,結実率が低いだけで,開放花も結実するそうです(閉鎖花はほとんどが結実)。これは遺伝的多様性を維持し環境の変化などに対応するためです。
2004年3月17日
タチツボスミレ
スミレの花。日本産のスミレは約100種類あるとか。これはタチツボスミレ。花びらは薄い紫色です。
ここ数日暖かい日が続いています。朝,ウグイスの声を聞きました。妻によると,数日前から鳴いているそうです。
2004年4月22日
スミレ
スミレ。スミレはスミレ科の総称であるとともに,種名でもあります。スミレ類の花の距には蜜があり虫が寄ってきますが,この花は実をむすびません。夏に,別の閉鎖花が出て自家受粉し,実を結びます。
2004年4月20日
ツボスミレの間違いです
ここにもフモトスミレが,と思ったら,これはツボスミレでした。4月18日のスミレもツボスミレの間違いです。林道脇のやや湿った場所に群生。1センチ前後の小さな白い花。距は丸く短い。
2004年4月18日
ツボスミレでした
フモトスミレ。日向神社の境内に生えていました。白い小さな花です。名前は山麓に生えることが多いことから麓スミレ。※訂正:これはツボスミレでした。距が紅紫色ではありません。
2003年6月6日
スミレ蒴果
大きく口をあけたエイリアンのような。これはスミレの種です。乾燥すると,三つに割れた殻のそれぞれが狭まって種を遠くへ弾き飛ばします。